「わかる」「できる」では、ものたりない高学年の子ども達
現実味や有用性の感じられる教材設定を!
数学教室09年1月号に 掲載 Taro-090112.pdf へのリンク
子ども達を『算数大好き』に育てていくことは、私達の大目標です。低学年の子ども達は、多くの場合「わかること」や「できること」が算数大好きにつながるようです。ところが、高学年の子ども達は、少し違った様子を見せます。「わかること」や「できること」が、自分にどうつながっているのか、自分の生活とどう関連づけられるのかが、疑問に思えてくるようです。
「何のために算数を学ぶのか。」「算数は、生活に役立つのか。」
教師の責務として、これらに応えるべく知的好奇心を満たす教材設定に努力するとともに、「現実味や有用さが感じられる算数」の姿を見せてやることが、大切だと思います。
1. 教材には、現実味や有用性の感じられる場面を設定しましょう。
●お豆腐で理解できた! <量分数>
生活場面で使われる分数は、たいていが割合分数であり、量分数はほとんどみかけません。後者は、唯一、料理の分野で使われています。料理のレシピに見られる「量分数」は、豆腐1/2丁、1/2カップ、大根1/2本・・・・などです。
分数の概念はもとより分数の加減法がどうしてもわからないという子どもを担当したことがあります。その子の回復指導に、正方形の豆腐のイメージで指導したところ「分数がやっとわかった!」と言ってくれました。生活に根ざさない1/2m,1/2?などではわからなかった子が、豆腐1/2丁などでの指導だと「よくわかる。」と言うのでした。生活に根ざした学習の力といえるでしょう。
●概数は、お金で導入するとバッチリ!
この教材は、指導者の思うほどには定着しにくいというやっかいな教材です。 導入に当たっては、野球やサッカーの観客数の場面から指導することが多いようですが、お金での導入が最も効果的です。それは、より生活に密着しているので概数のイメージがわきやすく、確かな概念形成が可能となるのです。これを基本にすえて指導すると他の場面でもうまく展開できます。
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およそ何万円 |
およそ何万円何千円 |
23627円 → およそ20000円
27125円 → およそ30000円
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23627円 → およそ24000円
27125円 → およそ27000円
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●実測して面積を求める学習をいっぱいさせる!<長方形・正方形の面積>
子ども達のつまずきをみてみると、1u=100cuとする誤答が少なくありません。量感の形成が十分でない子どももいます。これらは、面積学習を紙面上だけの計算にとどめているからで、広さと単位がまったく結びついていない結果です。紙や平面のものを渡して、その面積を求める学習をいっぱいさせたいものです。このときの留意点は、縦と横の長さを整数値にとどめないことが重要です。『縦5cmぐらい、横7cmぐらい、だから面積は35cuぐらい』などまで拡げます。これは、実生活で面積を用いる場面を提示すると共に、次学年での小数値の面積学習につながります。
u単位の学習も、教室を飛び出し、地面に正方形や長方形をかいて求積するなどダイナミックな実践がほしいものです。複合型の求積も自分で長さをはかり、はさみで切ったり貼ったりすることで、時間はかかりますが、確実な力がつけられます。
●比の学習は、「レモネード作り」
教科書では、二項比しか扱っていませんが、比は、本来三項以上が一般的です。また、二項では、割合との区別があいまいになり、比の概念形成ができないばかりか、比の良さが見えてきません。これまでに、コーヒーやホットケーキ、ミルクセーキなどいろいろ実践されてきましたが、『子どもをひきつける』『実験の簡単さ、正確さ』の点から、比の概念作りには、レモネードが最適と考えます。シロップ(同種の量の比にするために液量化する)とレモン果汁と水をまぜて、レモネードを作ります。お好みのレモネードのレシピを作り、それをもとに学習を展開していきます。意欲的に取り組め、概念がしっかり身につきます。
比の学習をして異種の量の比を教えた後で、「先生、こんな便利な方法なんでもっと早く教えてくれなかったん。」と言ってきた子どもがいました。子ども達にとって、比は、問題解決の道具としてとても便利なものだと実感できる教材のようです。
●その他の実践(紙面の都合上、項目のみの紹介とします。)
<仕事の速さ>
・実際の数値を調べ、子ども達に出題したいものです。
例「あるビール工場には、1分間に1500個、缶にビールをつめる機械が動いて います。1秒間に何個ビールをつめているでしょうか。」(仕事の速さ)
<折れ線グラフ>
・一つの表から、「『変化が激しい』と思えるグラフと『変化はほとんどない』 と思える二つのグラフを作ろう。」(PISA型学習)
実際の生活場面で果たすグラフの役割を考えさせる授業となります。
<平均・単位あたり量>
・歩幅と歩数から自分の家までの距離を求めよう。
歩幅を平均で求めてから展開していきます。
・家から駅までは何分?
上の学習を受け、ある不動産表示の基準「80mが徒歩1分」で、家から駅まで は何分かかるか求めます。
・50mを走りの速い人と自転車で競争! 勝利者は?(瞬間の速さと平均の速さ)
・重い大根が浮き、軽いニンジンが沈む不思議 ! (物質密度)
<割合(倍)>
・レシピから食材の量を求めよう。
実際のレシピを使って、割合(倍)を使って必要量を求めます。
<比・比例>
・形状比の学習で、「設計図から旗づくりをしよう。」
・「形状比を利用して校舎の高さを安全にはかろう。」
・「たくさんの釘の本数を(重さを量って)あてよう!」
2. 生活に根ざした作問をいっぱいさせましょう。
作問は、子ども達にとって学習を受け身的なものから能動的なものに転化し、意欲を引き出します。また、指導者にとっては概念形成がどれだけできあがっているかを把握する道具になるなど、大いに有効な取り組みです。「実生活と合った問題を作らせる」ことに留意して取り組ませます。
作問させると、「としお君は、ジュースを最初2?飲みました。後から3?飲みました。全部で何?飲んだでしょうか。」といった現実に合わない問題を作る子がいます。液量の量感が育っていないのです。
「20cuのことばを入れて、文章問題を作りましょう。」
「かけ算の問題、一あたりを求めるわり算、いくつ分を求めるわり算の文章問題 をそれぞれ一つずつ作りましょう。」
「式が2.4÷1.2になる文章問題を作りましょう。」
「20%のことばを入れて、文章問題を作りましょう。」
などの作問では、量感や概念がしっかりできあがっていないと、現実味のない問題を作る子が多く出てきます。こうした子ども達には、今一度概念形成を図りつつ「実際の生活に合つた問題を作ろう。」とうながし、取り組ませる中で、量感や概念形成が確かなものになってきます。
この他にも、□の式、割合、比や比例などの教材で是非作問させたいものです。
ついでながら、作問の際には、イラストをかかせたり、完成の後には作成者名も載せて宿題や練習問題にしたりすると、子ども達は大喜びし、課題に意欲的に取り組みます。