エアーライン・パイロットへの道

 

様々な分野で活躍するパイロット
 
パイロット(飛行機乗り)といえば、誰しもすぐに思い浮かべるのが全日空や日本航空など、民間の航空会社に務めるエアーライン・パイロットである。しかし、そのほかにも、たとえば海上保安庁のパイロット、消防庁のパイロット、防衛庁の戦闘機乗 り、薬剤散布、写真撮影の分野で活躍するパイロットなど、実にさまざまな職種分野でパイロットが活躍している。
 一般に、エアーライン・パイロットになるには4つの方法がある。


1,航空大学校を出てパイロットになるコース。
 航空大学校は宮崎市にあり、定員72名、修業年限2年である。
 受験資格は、
  ・4年生大学で2年以上在籍し、62単位以上を取得しているか、
  ・または短期大学又は高等専門学校を卒業した者
  ・または専修学校の専門課程の修了者に対する専門士の称号に関する規定に
   よる専門士の称号を付与された者
となっている。
 このほか、視力検査など一定の条件を満たしていることも必要である。
 試験科目は「英語」と「総合」問題。レベルの高い英語長文のほか、数学、物理、法律、国際関係、文化、歴史など、国家公務員一種試験クラスの幅広い一般教養問題が出される。受験倍率は7倍程度とかなり高く、従って、合格者もそれなりの超一流大学出身者が多い。ちなみに、合格者の大学での専攻は、経済学部、商学部、工学部、理学部など、いろいろである。聞くところによれば、航空大学校を受験するための予備校もあるらしい。
 航空大学校を卒業するには、国立大学と同じぐらい費用がかかる。ただし、特殊学校なので文部科学省の大学に在籍していてもかまわない。したがって、エリミネート(淘汰)された 場合に備えて、元の大学を「休学」にしておき、万が一パイロットになれなかった場合は、元の大学に復学するという方法もある。
 航空大学校についての詳細は、以下のサイトを参照して下い。
   http://www.kouku-dai.ac.jp/index.html

 

2.自社養成パイロット採用試験に合格するコース。
 パイロットになるためのもう一つの方法は、日本航空や全日空の自社養成パイロット採用試験に合格することである。ただし、こちらの試験は航空大学校の試験以上に超難関である。なぜなら、航空大学校の試験は、合格しても卒業後どこの航空会社に就職できるか分からないが、自社養成パイロット採用試験は 、合格と同時に将来その航空会社の社員となることを約束されるからである。おまけに、合格すれば給与ももらえる。
 受験資格は、4年生大学卒業以上の学歴を求めるところが多く、受験者100人に対して、合格者は一人程度といわれる。なお、自社養成パイロット試験では、日本航空、全日空ともに裸眼視力に関する制限はない。
 自社養成パイロット採用試験の詳細については、以下のサイトが参考になる。

   http://www.jal.co.jp/recruit/

   http://www.ana.co.jp/recruit/unkou/index.html

   http://aviation.wcn.to/jis/1.html

 

3、防衛庁に入るコース。
 防衛庁に入り、あらゆるパイロットの分野で活躍し、30歳〜40歳で退官(割愛制度もある)し、その後、民間エアーラインに入るというコースもある。こちらは衣食住 が保障され、親の費用負担は全く無い。
 平成16年度は、海上自衛隊70名、陸上自衛隊70名、合計140名の航空学生の募集があった。もしパイロットのコースに進めれば 、これは超エリートであり、特別待遇の世界(人生)が約束される。ただし、すんなり退官できるかどうかはその時の時代や状況による
 
エアーライン・パイロットに限定すれば、パイロットの74%は航空大学卒と自社養成で占められるが(下図参照)、現実の航空界(エアーライン・パイロットを含むあらゆる分野の民間パイロット )の約7割は防衛庁出身者といわれる。
    http://www.jda.go.jp/j/saiyou/jieikan/jia.htm

 

 

4、自費でパイロット資格を取るコース。
 
何が何でもパイロットになりたいという人に、最後にお薦めなのが、自費(約1300万円ともいわれる)で航空大学の卒業生と同じ資格を取り、エア ーラインを受験するというコースである。 一般に、大手の全日空や日本航空は、航空大学の卒業生や自社養成コースでパイロットを確保するのに対して、新興の航空会社にとって自社養成は多額の費用がかかるため、「即戦力」として自費で操縦免許をとった人を採用する傾向が強い。
 航空機の活動分野は,旅客又は貨物の運送を行なう以外にも、薬剤散布、写真撮影などきわめて広汎にわたっており、これを一般に産業航空とよんでいる。八尾空港にある 民間の操縦訓練所では、そうしたニーズに応え るためのパイロットを養成している(下記のホームページを参照)。中には、訓練費用が安いアメリカへ行って訓練する人もたくさんいる。
 そうした民間の訓練所で自家用操縦士の免許を取り(最低1年半はかかる)、飛行時間を重ね(200時間以上)、事業用操縦士(車でいう2種免許)を取って、かつ年齢が30歳前なら、エアーラインを受験し合格できる確率は相当高い。
   http://homepage3.nifty.com/ffc/

   http://www.asahiair.com/main.html

 

 

15社のエアーライン・パイロット(5828人)の出身別内訳
             
(2004年1月1日現在)


(出所 航空大学校50周年記念誌より)

 

エアーライン・パイロットの待遇 
 2003年現在、国内の主要航空会社のパイロット数は、約5800人。そのうち機長職にあるものは約3200人である。 一般に、パイロットという職業は、華やかなイメージで語られがちであるが、実際はかなり過酷な職場である。
 第一に、エアーライン・パイロットの免許は、機長はたったの6ヶ月、副操縦士は1年である。航空身体検査と同時進行で、実地試験と学科試験を6ヶ月(または1年)ごとに受けなければならない。それに合格しないと追試があるが、追試を受けるのは相当辛いものがある。こうした試験を60歳まで受け続け、合格し続けなければならない。ちなみに、同じく人の命を預かる医師免許は、一度合格すれば一生更新の必要がない。
 第二に、パイロットは「空中職」であって、「地上職」は無い。すなわち、怪我、または病気になって、3年以内に免許が取り戻せなかったら、即「解雇」である。地上での仕事は無い。これは全世界のエアーライン・パイロットの宿命である。だから家族はいつも不安にさらされている。
 第三に、国際線での時差克服も大変である。日付がわからなくなり、日記が書けなくなる。
 もちろんこうした過酷な職場であるから、待遇も決して悪くはない。全日空の場合、月50時間乗務するケースで、35歳の副操縦士の年収は1650万円、45歳の機長では2380万円になるという (1998年調べ)。しかし、パイロットに課せられた厳しさを知れば、この報酬は決して高いとは言えない気もする。

 

今後のパイロット需要
 一般に大型機の機長を育成するには15年の歳月と一人につき3億円の育成費がかかるといわれる。今後、団塊の世代が一斉に退職を迎える年齢に達するため、パイロットの採用は確実に増加する。国土交通省の予測によると、今の養成態勢のままでは、2007年から5年間、毎年50人〜100人のパイロットが不足するという。大手各社は、パイロットを確保するために、自社育成 の拡大に動き始めており、日本航空、全日空ともに、2006年度は50名程度の採用を予定している (詳細は、上記のホームページを参照)。
 近年は、女性のパイロットも増え始めている。
 
 

元全日空パイロットのお店
 
大阪府泉佐野市長滝に、元全日空の機長をしていた乙訓(おとくに)昭法さんという方が経営するバーボン専門のショット・バー「エアーマンズ・ワーフ」がある。26年間のパイロット生活を退職したあと、「航空業界と航空ファンの接点になりたい」ということでこの店を1996年に開業した。航空談義やおしゃべりが主体の店で、後輩のパイロットや航空ファンのほか、将来パイロットを目指す子ども達が来ることもあるという。もちろん店には、ソフトドリンク(ノンアルコール)もある。話を聞きたい方は、一度立ち寄られたらどうだろうか。店のホームページと、場所を紹介しておく。(営業時間は夕方6時から0時まで。定休日は火曜日)。

   http://homepage2.nifty.com/AirMansWharf/index.htm (店)

   http://www.asahi-net.or.jp/~qv8t-inue/map/amw/airmans.html (地図)

 

(追記)
 本稿の作成にあたっては、元全日空機長の乙訓昭法さんから貴重なアドバイスをいただいた。紙上を借りてお礼を申し上げたい。
                               (2005年3月20日)


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