心理学関係の職業

                                    (2000年8月) 

 最近,高校生の間で非常に人気のあるのが心理学である。すぐ「切れたり」「むかついたり」し、犯罪に走る少年たち。不登校で悩む中・高校生。ストレスで体調を崩すサラリーマン。そんな社会現象が,高校生に心理学を学びたいと思わせるのかもしれない。心理学を学び,その専門性を活かす仕事にはどのようなものがあるのだろうか。関西大学教授 清水和秋先生(社会学部)、 高知医科大学 軸丸清子先生(臨床心理学)に聞いてみた。

1,心理学を学ぶ
 心理学の学派はたくさんあります。代表的なものは,フロイト学派ユング学派です。臨床心理学(犯罪心理学を含む)では,フロイトの精神分析がベースになっています。ユング学派の代表者は河合隼雄( 元京都大学) 氏です。いろいろな学派の理論を学ぶ際に大切なことは,「なぜ」と「なにができるのか」を常に問いながら学ぶことです。
 心理学をアートとサイエンスという二分法で考えたくはないのですが,この二つの側面があることは確かです。マスメディアに乗っている方々は,アート的な雰囲気をうまく醸し出しているようです。河合さんがその典型です。心理学の人気は,アートの方にあるように思います。しかし、病院や学校などの臨床の現場で実際に必要とされるのは,(心理的診断の技術という意味を含めて)アートよりはサイエンスの方です。サイエンスとしての心理学は、他の学問分野との重なりが大きくなってきました。例えば認知心理学は脳科学の一部になっていますし,心理測定の分野では数理統計学出身の研究者も います。

2,オススメの大学
 心理学を幅広く教育している大学がオススメです。どれか一つの分野しかないというのでは世界に通用しません。大学のカリキュラムを調べて,どの程度の心理学分野をカバーしているかを調べることが大切です。
    『心理学を学ぶ,活かす。:心理の仕事・資格・学校選びまで』
      大川一郎・松尾直博著日本実業出版 
なども参考になると思います。
 また,大学によってカラーがありますので,注意が必要です。例えば、 ある大学では,「感情や情動」という分野に特化することで特徴を出しています。関西大学 の産業心理学専攻では幅広く取り組むことを目指しています。教育系では,学校教育現場や子どもの発達が中心の場合が多いようです。大学や学部を 選ぶ際には,くれぐれも,自分のやりたい分野をカバーしているかどうかを確認して下さい。

3、心理学を活かした仕事
 心理学を専門とする仕事の代表は,公務員です。
(国家公務員)
  法務省の鑑別技官、労働省,警察の鑑別,自衛隊の航空適性,
  家庭裁判所の調査官など。
(地方公務員)
  児童相談所の心理判定員など。今後は学校カウンセラーの需要も高まるかもしれません。
 一方,民間では人材派遣の教育や進路適性診断の仕事などにつく人もいます。 他には、企業内での人事管理を産業カウンセラーの観点やキャリア開発の観点などでの仕事についている人もいます。他にも、マーケッティング調査や広告などの効果測定など、民間でも多様な仕事を心理学出身者がしています。

4、臨床心理士
 臨床心理士の資格を取り,病院関係で仕事をするためには,やはり大学院まで出ておく必要があります。第一種指定大学院を出れば卒業と同時に、臨床心理士の試験が受けられます。ただし、資格をとっても、就職となるとかなり狭き門です。また、実務についてからもスーパーバイザーにつき、数年間の訓練を要します。それには毎月数万円のお金が必要で、最初の10年近くは経済的にも大変です。
 なお、臨床心理士と精神科医は基本的には、別です。精神科医は薬物で精神症状をコントロールすることを目的とします。これに対して臨床心理士は人間の心の深い所に触れ、人格の変容をもたらすことを目的とします。それだけに臨床心理士には成熟した人格と心理療法の技能が要求されます。「心理療法家の仕事は危険に満ちた、大量のエネルギーを必要とする仕事で、簡単にできるものではありません」と言われる。(『人の心はどこまでわかるか』 河合隼雄 講談社)

                      関西大学社会学部 清水和秋研究室
                     http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shimizu/

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