小論文の書き方


最近入学試験に小論文を課す大学が増えている。受験生の論理的思考力や人間性を見るためである。一般に、小論文を書くことは決してやさしくはない。しかし、論文の書き方の基本をマスターしておけば恐れるには当たらない。さあ、きみも以下の基本事項をマスターし、どんどん文章を書いてみよう。


【1】 出題の形式
 入試論文で一番多いのは、一問の指定字数が800字、制限時間が80分の タイプである。ほかに、600字60分や1000字100分などのタイプもよく出題されている。  また出題形式は、大別すると次の3通りに分類できる。

タイプ1
 「〜について述べよ」  という型。

これは論文の一番基本的な出題形式である。この形式の出題はほとんど学力検査に近いといってよい。受験生の論理的思考力・独創性・人間性など総合的な学力が試される。

タイプ2 
 「次の文章を読み、筆者の主張を要約し, それに対するあなたの考えを述べよ」という型。

これは入試論文で一番多く出題されるタイプである。課題文を的確に読み取れるか。また、それに対する自分の考えを論理的かつ明快に表現できるかが問われる。大学教育に耐えうる力を持っているかどうかを診断するには格好の形式といってよい。特に要約は「正解」が存在し,受験生の得点差がつきやすい。
 要約は、筆者の主張の核を探す作業で,通常は本文中に主張の核となる一文を入れてくれるのが常識である。しかし、それでは受験生がみんな満点を取ってしまうので,入試問題は意図的にピッタリくる一文が入っていない「悪文」の見本のような分かりにくい課題文を出すことが多い。そのような場合は、一言で言うと何が言いたいかを「自分の言葉」でまとめるしかない。(かわいそうなのは,そのような悪文を読まされる受験生である!)

タイプ3
 「データを与えて、それをもとに考察せよ」  という型。
データとしては、表・グラフ・漫画などが使われることが多い。大学生になると、さまざまな実験や調査結果からどのようなことが推論できるかを求められることが多い。このタイプの出題は受験生のそのような能力を見ようとするものである。

                                                                                                                                   【2】論文の基本的な構成(800字の場合)
 論文は一般的に次のような「序論・本論・結論」の構成で書くとよい。ほかにもいろいろ書き方はあるが、とりあえず一番基本となるこの構成をマスターしよう。なお、「起承転結」型は漢文の発想で、論文の構成には使ってはならない。


 序論 ・・・・・・・・・・問題の所在を疑問文の形で提示する。(5%〜30%、240字)今なぜこの問題を論じる必要があるのか、あるいは論じたくなったのかなどを書いてもよい学者の書く本格的な論文は、ここで従来の考え方・研究のサーベイをする

 本論 ・・・・・・・・・・自分の主張を述べ、それが正しいと考える根拠や理由を述べる。(60%〜80%、、480字)
           第一に・・・・・ 
           第二に・・・・・ 
           第三に・・・・・                             
 その際 @データ(統計、実験、世論調査等)、A論理  B歴史的に考える、C外国の例、D新聞記事、E自己の体験F反対意見、などを駆使する 
 結論 ・・・・・・・・・・以上の理由によって、私は 〜 と考える。(10%、80字)  
論文とは主張とその証明のある文章である。自分の言いたいことは明示的にストレートに書くこと。                                                            

      

【3】論文作成の手順
 論文作成の手順  試験問題が与えられたとき、いきなり答案を書き出す人がいる。しかしこのような書き方では残念ながら不合格になることは間違いない。 建物を建てるとき、綿密な設計図が要ると同じように、論文を作成する場合も、書きはじめる前に全体の構成(設計図=フローチャート)をきちんと考えておかなければならない。大雑把な目安として、この「全体の構成」を考えるのに、制限時間の1/4から1/3を使いたい。 作成要領は以下の通りである。

1,思いつくままにメモ書きをする
その際、考えを深めるコツとしては
@データ(統計、実験、世論調査等)、
A論理、
B歴史的に考える、
C外国の例、
D新聞記事、
E自己の体験 
F極端な例を想定する
など5W1Hを基本に考える。
次に,そこからどんなことを論じようか,自問自答する。論文とは自問自答のプロセスでもある

2,結論を決定し短い文章でまとめ、次に全体の構成を考える
      (序論・本論・結論および字数割り当て)
この時、あれもこれも書いてはいけない。結論を導くのに必要最小限のことだけを書き、あとは捨てる。捨てたものが多い ほどすっきりした論文が出来上がる。(論文は数学の証明または自然科学の証明と同じで、論理的に書くことがいちばん重要である。) なお、この時大風呂敷を広げてはいけない。自分の力で料理できるテーマに絞り込むこと。また「あなたの意見を述べよ」 と言われた場合、多少のリスクを伴うができればオリジナリティを出す こと。誰でもが考え付くようなことを書いても合格答案にはなりにくい。ただし、結論がありふれたものであっても、論証の材料に「おや」と思わせるものがあれば高得点がつく。
書きはじめる前のこの「設計図(=フローチャート)」の段階で論文の善し悪しのほぼ9割は決まってしまうといってよい
ここまでで制限時間の4分の1〜3分の1を使う!
                                                                                                                                                                                               3、書き始める。
下書きは時間の無駄である。いきなり清書をする。この時、最初の設計図通りに書くこと。書いている途中でどんないいことを思 いついても書くな!全体のバランス・論理が崩れてしまう。
また、一度書き始めたら絶対に立ち止まらないこと。筆が止まって再び書き始めると、論理の飛躍が起きる可能性が高い。書いている途中で立ち止まらないように、最初の設計図の段階でしっかりと全体像を作っておくこと。                                                                              

【4】書く際の諸注意
1、ていねいな字で書くこと。(今まで、字のきたない人で論文試験に合格した人はいない)。誤字・脱字は印象を悪くする。
2、1行目はお見合いの第一印象と同じ。間違ったことを書くと致命傷!また、「題」をそっくり疑問形にしたものも不可。工夫が必要である。読んでみようか、と思わせる文章がよい。
3、one sentence の長さは50字以内が原則。特に文章を書くことが苦手な人は、必ずこの原則を守ること。長い文章はどうしても「ねじれ」が  生じやすい。短く、きびきびした文章を書きたい。     
4、S・Vの関係をはっきり書く(主語のない文を書くな)。     
5、語尾の文体は「〜である」調に統一する。     
6、キーワード・専門用語・年号・引用などを有効に配置し、実力のあるところを行間ににじませる。また、あやふやな知識は書かない。     
7、400字以下の場合は段落分けをする必要はない。     
8、事実によって語らせること。余分な形容詞や副詞・修飾語は一切不要である。     
9、出題意図を見抜くこと。特に学部が異なると要求される内容もまったく違う。たとえば「自由について述べよ」という問題が出されたとする。法学部の場合は「国家からの自由」や「他人の自由を侵さないかぎりでの自由」が問題になる。一方、経済学部の場合は「自由放任政策とその修正」という大きな流れが問題となる。また、文学部の場合は厳密な意味での「精神的な自由」が問題となる。仮にある人が物事を自由に考えていると思っていても、もし常識にとらわれていたり、科学というものを絶対視しておれば、その人は自らを縛っていることになる。文学部の自由は「常識」の枠にもとらわれない徹底した自由が要求される。     
10、体言止めは不可。    
11、指示語(それ、前者・後者など)はなるべく使うな。
12、自分でも理解できない難しいことを書こうとしてはいけない。カッコウをつけてもすぐバレる。人真似をせず、自分の文章でわかりやすく書こう。
 

【5】小論文の評価基準  
採点は3名で行なわれることが多い。たとえば群馬大学の採点基準は次の通りである。
    A.80〜100点     B.70〜79点     C.60〜69点     D.50〜59点     E.50点未満  
評価は、下の基準で3名の評価班によって行なわれ、3名の採点に大きな違い(20点以上の差)のある場合を除いて、3名の評価の平均が採られる。                                                                   

群馬大学
【具体的評価基準】
表題に対する解答の的確性・内容性(20%)
問題文の趣旨が分からずに、全く見当違いの解答は大幅に減点される=D以下。
文章の論理性(30%)                        
論理の展開が明確で、文章の構成(主語・述語の使い方等)が優れ、何を主張しようとしているのか、ハッキリしているものがよい
創造性(40%) 
出題文に引きずられての解答はB以下の得点。主張のユニークさ、場合によっては「奇想天外」「意外性」の発想が高得点につながる。
誤字・脱字について(10%)B・C段階では5点前後の減点。採点者によって異なるが、一般に高得点者には見られない。
                                                             

【6】日頃から心がけておくこと
 試験問題をみて考えるのでは遅い。早めに自分の志望学部・学科の出題傾向を分析して、事前に書くべき論文(=得意ネタ)を準備しておこう。もちろん、そのものズバリ出るということはありえない。しかし、基本的な「知識」のストックがなければ何も書けないことだけは確かである。論文なんて作文と同じで、何か書けば点をもらえるだろう、なんて思ったらとんでもない間違いである。この点を誤解している受験生が意外に多い。
 

では、日頃から何を心がければよいのか。
1、過去問を分析して出題傾向を調べる。 いくつか予想問題を作っておき準備しておくのも一つの手である。
2、受験する学部・学科に関する本(岩波新書など)を読んでおく。書く力は読んだ本の量に比例する。志望学部に関連した岩波新書レベルの本を、少なくとも10冊程度は読んでおきたい。無から有は絶対に生じない。
3 新聞などで関連する事項があればコピーをとっておく。特に投書欄は他人の考え方を知るのによい。社説は無理をして読むことはない。
4、友達や先生を捕まえて、出題されそうなテーマについて議論をする。
5、書いた小論文を先生に添削してもらう
6、大切なのは「与えられた問題を解くこと」ではなく「自ら問題を発見する力」である。他人に問題を出してもらって、それを解いてばかりいても本当に考える力はつかない。大学側が、論文試験でとりたがっている人間とは常識を疑うほどの好奇心を持った人間である。

7、「最も望ましい答案は、高校時代の自分の体験がにじみでてくる文章です。抽象的で個性に乏しい答案は、中間点以上にはなりません。しかし、受験生の小論文対策が進んだためか、最近はそうした個性なき答案がふえる傾向にあります」。「いわゆる小論文指導というものは、技術面のみが先行していると思います。しかし技術面の偏重は、個性のない紋切り型の文章の習熟に終始してしまい、結局は低い評価しか受けません。むしろ高校生活の中で、クラブ活動や交友、師弟の交わりなどを通じて豊かな感性、柔軟な思考力を磨くことによって、借り物でない自分の視点や考え方を持つことが、早大文学部のみならず、小論文試験で高い評価を受ける早道と考えて下さい」。(早稲田大学文学部 冨田正利教授談)。

8、「論文試験で独創性のある人を採りたい。受験勉強で伸び切った人はいらない。いわゆる普通の試験で「秀才型」の学生を集めることはできる。しかし秀才型ではなくとも、膨大な本を読み、荒削りでもよいから "Original" な考え方のできる学生も採りたい。普通の試験では拾えなかったそういった人材を、論文試験を課すことによって全国の受験生(約50万人)から20人でも30人でもすくえればよい。」(京都大学経済学部 尾崎芳治教授の談話を要約)

【7】よく出題される小論文の問題例

推薦入試   高校時代の活動、大学で何を学びたいか、志望動機、

一般入試  

【法学部】
市民革命の意義と憲法の役割について
★社会契約説について
人権保障の歴史について(自由権から社会権へ)
★私的自治の原則と「国家の出番」について
★罪刑法定主義について
★法と道徳の関係について
死刑制度の是非について
★国民の権利・自由の行使と公共の福祉による人権の制限について
J,S,ミルの「自由」について
遺伝子治療をめぐる法的問題(最近増えています) 

【経済学部】
資本主義の発展および弊害と、その克服について
★A,スミスとJ,M,ケインズについて
財政政策の目的(3つ)と問題点。
★市場の失敗について
★インフレはなぜいけないか。また、インフレの原因を3つ述べよ。
★社会主義思想とはいったい何であったか。
高齢化社会の問題点について
★「ヒト、モノ、カネ」の国際化に伴い、どのような問題が生じているか。
★諸君の日常生活の中から、Y=F(X)という関数で表される経済現象を一つ取り上げよ。
★日米貿易摩擦の原因と対策について
「豊かさ」とは何か
★環境問題について諸君の意見を書け。
規制緩和の功罪
IT革命のもたらすもの
 

【国際関係学部・外国語学部・人文系学部】     
★これまでの異文化の接触の仕方について、3つのパターンをあげて説明せよ。
★わが国の国際貢献の在り方について
「国際化」、「国際人」とは何か。
★自然と人間というテーマで諸君の意見を述べよ。
★「遊び」という題で論ぜよ。
情報化社会と国境
日本人論

【教育学部】     
ルソーのエミールについて
★家庭教育と学校教育、
いじめについて
校内暴力について 

【工学部】
★科学技術と人間の幸福について  

【医学部】
ガン告知、
★安楽死・尊厳死、
★高齢化社会と介護、
★HIV
臓器移植について 


小論文が苦手な人へ 

 小論文が苦手だという人に共通しているのは、以下の4点である。もし、原稿用紙を前にして、何を書いたらよいか思いつかないという人がいたら、次の項目のどれに原因があるのかチェックしてみよう。

 小論文が書けない原因

  1. 心の底から「訴えたいという気持ち」が欠けている。 
  2. 書くべき内容に関する基本的知識がない。
  3. 物事を因果関係で考える習慣が身についていない。
  4. 論文にまとめる技術や日本語の表現力が不足している。  

1、心の底から「訴えたいという気持ち」をもつ。

 論文を書くうえで一番大切なことは、読者に何かを訴えたいという「気持ち」である。「みなさん、聞いてくださーい。私はこんなふうに考えます」という気持ちが論文を書く際のエネルギーとなる。この気持ちが心のなかに十分高まっていないと、いくら原稿用紙とにらめっこしていても論文は書けない。

 ところが、論文が苦手だという人は、えてしてこの「訴えたいという気持ち」がない。すなわち、テーマが与えられたから、仕方なくそれについて書かされているのである。しかし、そもそも書きたいことがないのだから文章が浮かぶはずもない。その結果、論文は苦手だと思ってしまう。このような人にとって有効な処方箋は、

     与えられたテーマを自分の身におきかえてみること 

である。「ゴミ問題」だったら、自分の家の前に不法投棄された高さ10メートルのゴミの山があり、風が吹くたびにほこりが飛んできて洗濯物を汚す光景を想像することである。また、「脳死問題」だったら、自分の親が脳死になって、動いている心臓を取り出す光景を頭に思い描いてみることである。このように、与えられたテーマを自分の身におきかえることによって、「訴えたいという気持ち」が生まれてくることが多い。一般に、社会科学系の小論文では、現状に対する問題の指摘をし、改善して理想に近づけるというパターンをとる事が多い。

2、基本的知識を日頃から収集しておく

無から有は生じない。テーマが与えられたら、指定された字数の少なくとも十倍は書けるだけの知識を持っていることが必要である。800字でまとめよと言われたら、少なくとも8000字程度は書けなくてはいけない。答案用紙で書くのは、自分が知っている知識の1割程度、まさに氷山の一角と心得ておいてほしい。そして、答案をまとめる際に大切なことは、知っていることをすべて浅く広く書くのではなく、一つのテーマに絞り込んで、深く書くことである。

 一般に受験生は、自分が知っている知識をすべて書くことが良い答案の条件であると勘違いをしている。例えば「地球環境問題について800字以内で論ぜよ」とあったら、地球温暖化・オゾン層の破壊・酸性雨・熱帯雨林の消滅など、すべてを盛りこみ、いかにも自分がたくさん知っていることをアピールしたがる傾向がある。しかし、これは間違いである。800字ですべてを盛り込むなど土台無理な話である。いい答案とは

         知識の量ではなく、分析の鋭さ

を感じさせる答案といってよい。そのためには

        ひとつのテーマに絞り、深く書くこと

である。800字のなかで、あれもこれも盛り込んでも決して感動を与える答案にはならない。ひとつの小さなテーマに絞り込み、深く書く。もし分析の鋭さが十分に示されていれば、たとえ答案に書かれていなくても、採点者は受験生が本当はどのくらいの知識量を持っているのかを感じ取ってくれるものである。知っていても書かない。その奥床しさがいい答案にしあげる秘訣といってよい。

 また、「いろいろ」とか「さまざまな」とかいうごまかした表現もなるべく避けたい。基本的知識が不足している答案とみなされるからである。本当にわかっていたら、具体例をあげられるはずである。また、抽象語ばかりを書き並べた答案も避けたい。抽象語を具体的事例に置き換える力がないといい答案にはならないことも知っておいてほしい。

3、物事を因果関係で考える。

 多くの場合、社会現象には因果関係がある。子どもの数が減れば、相対的に老人の数が増加し、その結果、年金や医療保険が破綻の危機に瀕するかもしれない。また、公定歩合を引き下げれば、金回りがよくなって、景気が回復し、さらに行きすぎるとバブルが発生するかもしれない。このように、社会現象はさまざまな事柄が影響しあっている。したがって、物事を考える際には、ある事象が、何が原因で生じているかを常に意識することである。大切なのはロジックであって、用語を暗記することではない。すなわち、原因をx、結果をyとすると、

              y=f(x)

で考える癖をつけることである。とくに理科系の論文では、データを見て、そこに因果関係を発見し、それをy=f(x)に結びつけることができれば、それで十分合格答案である。書き方そのものはそれほど重要ではない。

4、論文にまとめる技術や日本語表現力を養う。

 まず第一に、言いたいことをはっきりさせることである。そのためには「結論を短い文に書いてみる」ことを勧める。その際、訴えたいことは一つにすべきである。おもしろい話でも、一つだけなら心にしみるが、いくつも聞かされれば印象に残らない。全体を読み終わって、結局何を言いたいのかよくわからない答案は絶対に書いてはならない。たとえば資料文が与えられた場合、最初に著者の見解をしっかり読み取り、その上で、著者に「賛成」か「反対か」自己の立場を明らかにする。賛成の場合は、著者と同じ理由では論文にならないから、著者とは違う理由をあげる。

 第二に、論文の構成も大切である。とくに序論における問題提示と、結論の答えの部分の対応が一致していないと意味不明の答案になる。序論・本論・結論の各パートがそれぞれの役割をはたしていることが求められる。

 第三に、わかりやすい日本語表現を心がける。論文における最良の日本語とは、一読して意味がわかり、しかも100人が読んでも一通りにしか解釈できない日本語である。あいまいな文学的表現は避けたい。


 以下では,小論文対策として読んでおきたい本をあげておく。本を読む時間がない人や読む前にとりあえず基本を頭にいれておきたいという人は
『小論文頻出テーマ解説集 現代を知る』 第一学習社 の一読をすすめる。経済・政治・教育・社会・環境・国際関係・遺伝子など,頻出テーマの基本をそれぞれ6ページでコンパクトに解説している。


「経済・経営・商学部関係」 

(入門書)                                         

    書  名         著 者     出版社                            

『痛快 経済学』 中谷巌 集英社インターナショナル
 難しい経済学をわかりやすく解説している。規制緩和や市場の働きなど最新の理論も含めて充実した内容である。これで下品なイラストがなければもっといいのだが・・・。

『行革と規制緩和の経済学 吉田和男 講談社現代新書
 大きな政府から小さな政府を目指すのは何故か。今一番ホットな話題を扱う。

『経済学はむずかしくない』 都留重人  講談社現代新書     
 初めて経済学の理論を学ぶ人にすすめる。ミクロ・マクロ両方をわかりやすい例を用いて解説。著者の例え話は天下一品。                                               

『経済学の考え方』  宇沢弘文  岩波新書 
 スミス、マルクス、ケインズのエッセンスを知るのに良い。P139まで読めば十分(ただし P72〜P109は不要)。経済学部希望者は必読。                                          

『ケインズ』  伊東光晴  岩波新書  
 ケインズ理論の好入門書。経済学部受験者は必読。時間のない人はせめて P145〜P150 だけでも完全に理解しておくこと。                                                

『経済のしくみ 100話』  岸本重陳  岩波ジュニア新書 
    辞書として使うと良い。この本での体系的な勉強は不可。                                             

『豊かさのゆくえ』  佐和隆光  岩波ジュニア新書  
 戦後の日本の経済発展をふりかえりつつ、これまでの豊かさを反省し、今後の豊かさの方向を展望する。

『日本の国家予算』 吉田和男 講談社
 財政破綻の危機に瀕するニッポンの財政状況を解説。

『赤字財政の罠』 水谷研治 PHP新書
 経済再建のためには、財政赤字を解消する大手術が必要。国内総生産を10年前の水準に戻す覚悟をして改革を断行せよと説く。正論とも言うべき経済政策を実行できない背景には民主主義との不調和がある。                                        

(中・上級用専門書)                                                                

『会社本位主義は崩れるか』  奥村 宏  岩波新書       
 経営学部希望者は必読。日本の会社の長所・短所をずばり指摘する。

『ゼミナール・日本経済入門』  日本経済新聞社編   日本経済新聞社 
 日本経済の現状を紹介する。理論にも少しは触れる。大学1年生・社会人向け。必要な箇所だけ読めばよい                     

『ゼミナール・現代財政入門』  本間正明  日本経済新聞社
 経済学部希望者の2次論文対策用。必要な箇所だけ読めば良い。                        

『ゼミナール・国際経済入門』  伊藤元重  日本経済新聞社
    経済学部希望者の2次論文対策用。必要な箇所だけ読めば良い。                        

『共産党宣言』  K,マルクス F,エンゲルス  岩波文庫    
 「これまでのすべての歴史は階級闘の歴史である」。1848年に書かれた古典。P33 〜P35は一度は必読。                                        

『経済学批判』  K,マルクス  岩波文庫    
 1859年に出版された。最低限「序言」(P13〜P15)は読むこと。唯物史観の公式が書かれている。                                            

『入門マクロ経済学』  中谷巌  日本評論   
  大学用本格的テキスト。高校生は読まなくて良い。経済学とはどんな学問か。雰囲気を知るために眺めるだけで良い。                                                  

『現代経済学』  ヘンダーソン・クォント  勁草書房   
 大学の経済学部におけるミクロ分野の標準的テキスト。高校生は読んではいけない。経済学の雰囲気を知るために眺めるだけで良い。経済学に数学が不可欠であることを知ってほしい。                                                     


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  「法学部関係」 

 (入門書) 

 書  名    著 者    出版社                                                                  

『憲法入門』 伊藤 真 日本評論社
 そもそも憲法とは何か。この本を読んで,目からうろこが落ちる人も多いはず。名著である。

『法とは何か』  渡辺洋三  岩波新書       
  高校生にも読める、ほとんど唯一の法学入門書。味読してほしい。                                                                              

『憲法読本』  杉原泰雄  岩波ジュニア新書   
 権力者はこれまで一方で明文改憲を求めながら、それを実現できないのでそのピンチヒッターとして「解釈改憲」の方法を用いてきたと説く。                                       

『法律学ヘノ第一歩 v.1「法律学への旅立」』  渡辺洋三  岩波書店      
  自力救済が禁止されている市民社会において「国家」の出番とは何か。出なければいけないところに出なかったり、逆に出てはいけないところに出しゃばることがないかを考える                                       

『法律学ヘノ第一歩 v.2「憲法」』  杉原泰雄  岩波書店        
 権力は国内最大の実力である。その担当者が憲法の制約を受けずに権力を任意に行使できるとしたら、空恐ろしい。憲法の特色は、「人権の目的性」と「権力の手段性」にある。                                       

『日本政治を読む』  間場寿一ほか  有斐閣         
 現代日本の政治の現状を具体的に紹介する。現実を知る好入門書。

脳死・クローン・遺伝子治療』 加藤尚武 PHP新書
 従来のバイオエシックス(生命倫理学)では,安楽死,臓器移植,中絶などを「自己決定権」という観点から論じてきた。しかし,近年その原則では扱えないクローン,遺伝子治療など新たな問題が浮上してきている。

『生命観を問いなおす』 森岡正博 ちくま新書
 「他者の生命や自然を一方的に犠牲にし利用してまでも自分たちは快適に生き続けたいという欲望」が、環境問題や臓器移植の背景にあると説く。上の加藤尚武の本と対比するとおもしろい。

中上級用専門書)                                                  

『自由と国家』  樋口陽一  岩波新書        
 「近代国家は、初めからそこにあるものではなくて、人々が作りあげ たものだったはずである。・・・そのような近代国民国家を作り上げ、そのうえでそれをしばろうという厄介な使命をおびて登場してきたのが近代憲法にほかならなかった」(P206)。法学部・経済学部の論文対策の必読書。                                                   

『現代政治の思想と行動』  丸山眞男  未来社          
 難解な本だが、法学部・経済学部希望者の2次論文対策用として必読。                                       

『日本の思想』  丸山眞男  岩波新書         
  丸山眞男の文章は入試によく出る。この本もやさしくはない。                                           

『日本国憲法概説』  佐藤功  学陽書房         
 法学部1〜2年生向けの司法試験の基本書の一つ。法学部志望者は一度手にとって見てほしい。                                            

『自由論』  J,S ミル  岩波文庫        
  自由とは他の人々の自由を侵害しない範囲で社会的に認められる、と説く。決して読みやすい著作ではないが読むに値する古典的著作である。                                       

『憲法ゼミナール』  浦部法穂   実務教育出版      
 本格的な憲法解説書。至る所に著者の思想が明快に説かれる。論理的に考えれば、常識と思われていることも疑問に思われることがある。                                         

『国家と個人』  田中 浩  岩波書店        
 市民革命以降の国家と個人の関わりを考えさせてくれる良書。                                           

『自由主義の再検討』  藤原保信  岩波新書        
 ホッブズ、ロック、ルソーなどの社会契約説の説明がよい。早稲田大学政経学部受験者は必読。                                            

『もういちど憲法を読む』  樋口陽一  岩波書店        
 法学部受験者にすすめる。感激する箇所がある。


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  「国際関係学部・外国語学部関係」                                                                                          

(入門書)

書  名      著 者    出版社                                  

『言葉と文化』  鈴木孝夫  岩波新書        
 入試に頻出                                                                                       

『菊と刀』  ,ベネディクト  世界思想社       
 日本人は「恥」の文化、西欧は「罪」の文化と説く古典的名著                                           

『パパラギ』  岡崎輝男訳  立風書房        
 ヨーロッパとミクロネシアのいずれの文明が豊かなのか。                                             

『国際感覚ってなんだろう』 渡部 淳 岩波ジュニア新書
 国際感覚を身につけている人とは,「自分の意見を持っている、それを伝えることができる、ステレオタイプの発想をしない、日本についてもよく知っている、異文化と正面から向き合う」,そんな人のことであると著者は言う。

『めざせ,世界のフィールドを』 小沼廣幸 岩波ジュニア新書
 青年海外協力隊からFAOの国連職員になった著者の体験談。国際公務員に関心のある人にオススメ。

『国際協力の新しい風』  中田正一  岩波新書        
  時間のない人は231〜232ページだけでもいいから読んでおくこと                                          

『国際人の条件』  武者小路公秀  三嶺書房        
  何でもかんでも「国際」と名のつくものに人気がある。外国語が堪能で 、年中飛行機で世界を飛び回っている人が本当に国際人といえるのか。                                       

『地球の未来はショッキング』  高榎 尭  岩波ジュニア新書    
 核戦争、貧困、環境破壊など地球的発想で書かれた本                                               

『国際政治』  大西仁ほか  東研出版         
  高校生のための現代社会シリーズ、V6。食糧、エネルギー、平和などの問題を解説する。特に第4章の平和の理論的分析が良い。                                            

『現代国際政治入門』  舛添要一  PHP           
 現実主義の立場から国際システム論、スイスの安全保障など、国 際政治の在り方を説く。                                               

『世界地図の読み方』  高野孟  PHP          
 国際政治に関する61のテーマを地図との関連で説明する。おもしろい。                                                                             

『外国の教科書の中の日本と日本人』  石渡延男  一光社        
 シンガポールの中学校の教科書を日本の高校生が訳したもの。第2次大戦における日本の侵略をシンガポールではどう教えているか。                                           

『国際政治』 高坂正尭  中公新書        
 代表的な現実主義者の立場からのコンパクトな入門書。                                                

『国際関係の政治経済学』 川田侃  NHK市民大学叢書   
 国際政治、特に勢力均衡政策と集団安全保障の説明はわかりやすい。                                         

『現代史』 須藤眞史 学陽書房          
 第2次大戦後をコンパクトにまとめる。比較的易しい。                                              

新版『軍縮の政治学』 坂本義和  岩波新書         
  国際平和はいかにして可能か。法学部・経済学部希望者の2次対策用に良い。                                                     

『国際連合』 明石康 岩波新書          
  国連が具体的にどんなことをしてきたかを知るには良い。理論書ではない点に注意。                                                 

『現在を読む世界近代史』  W,ウッドラフ TBSブリタニカ        
  1500年以降のヨーロッパの拡大と、現代におけるアジアの復活を説く。「比較的たいしたことのないヨーロッパ人が全世界に対し、いかにして権力をふるうようになったかというのは、過去の謎の一つである。」(p33)                                                       

(中上級用専門書)

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』  M,ヴェーバー  岩波書店   
 プロテスタントの多いところで資本主義がよく発達した。これは新教が蓄財を肯定したためであると説く。今や古典的地位を確立した本。                                        


教育学部関係 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     『教育改革』 藤田英典 岩波新書 
 いじめ,校内暴力,学校5日制など,今学校で問題になっている事柄に対してどうすればよいかを考える。

『教育入門』 堀尾輝久 岩波新書
 民主教育の立場から,教育の歴史,教育の本質を解説する。

『独創教育が日本を救う』 西沢潤一 PHP
 著者の学問に対する厳しさはつとに有名。大学院生が泣き出してしまうほどである。研究は夢をつかまえることから始まるという。

『新・教育学のすすめ』 村井 実  小学館
 今の教育がはたして人間をよくしているのかと問いかけ,これまでの教育学の誤りを指摘する。今から20年以上も前に慶応大学の教室で受けた村井先生の「人間は皆よくなろうとしている」というメッセージは,今も強烈に耳に残っている。

『人の心はどこまでわかるか』 河合隼雄 講談社α新書
 臨床心理の大変さを語る。スクールカウンセリングや教育における「父性の原理」がおもしろい。


環境問題

『地球環境報告』 石弘之 岩波新書
 80ヶ国以上を自ら歩いて調査した報告書。

『環境倫理学』 加藤尚武 丸善ライブラリー
 人口が2倍になれば生活水準は2分の1になるというのが自然の掟であるが,人間の世界では通用しない。現在のエネルギー消費量を半分にしたら,わずか35年前の1965年の生活水準に戻るだけである。環境問題を世代間倫理の問題として捉える。

『地球温暖化を考える』 宇沢弘文 岩波新書
 6500万年前、地球に巨大な隕石が落ち,膨大な砂塵が舞い上がり,そのため太陽の光がさえぎられ地表の平均気温が2℃下がった。そのけっか、恐竜が絶滅した。今,地球の平均気温が15℃に保たれているが…。


医学部・看護学部関係

『医の現在』 高久史麿 岩波新書
 感染症・臓器移植・医学教育のあり方など,医学の現状とあるべき姿を分析。

脳死・クローン・遺伝子治療』 加藤尚武 PHP新書
 従来のバイオエシックス(生命倫理学)では,安楽死,臓器移植,中絶などを「自己決定権」という観点から論じてきた。しかし,近年その原則では扱えないクローン,遺伝子治療など新たな問題が浮上してきている。

『生命観を問いなおす』 森岡正博 ちくま新書
 「他者の生命や自然を一方的に犠牲にし利用してまでも自分たちは快適に生き続けたいという欲望」が、環境問題や臓器移植の背景にあると説く。上の加藤尚武の本と対比するとおもしろい。

『看護』 増田れい子 岩波新書
 ナースの生の声が興味深い。看護学部を受験する人は必読。


社会福祉学部関係

『寝たきり老人のいる国、いない国』  大熊由紀子 ぶどう社   
 北欧には「寝たきり老人」が本当にいない。これはどうして可能なのか。ノーマライゼーションの思想と、財政面の両方から21世紀の日本の社会保障の方向を示す。

『日本の高齢者福祉』 山井和則・斉藤弥生著
 自分でヘルパーや「寝たきり」を体験しながら,高齢者福祉の現状をルポ。山井はその後衆議院に立候補し当選した。福祉問題のプロとして日本の改革に意欲を燃やす。


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