不景気の原因

 

1、不景気とはどのような現象をいうのか
 
問1 不景気とは一般にどのような現象をいうか。4つ以上あげよ。
                          (常に現実から考えること)
問2 上であげたものの中で、不景気の根本原因となっているのは何か話し合ってみよう。(これが分かればあなたはケインズ並みの天才!)
 
問3 問1であげた現象を、y=f(x)という因果関係で表せないか考えてみよ。
                  (経済現象は連立方程式で表現できる!

解答例)

問1 @モノがうれない
   A会社が儲からない
   B物価が下がる
   C就職できない
   D給料があがらない
   Eリストラが増える
   F倒産が増える
   G失業者が増える

問2 @のモノが売れないこと。そのため、A以下の現象が起きる。

問3 これを考える学問を「計量経済学」という。
   数学やコンピュータを駆使して予測をする。ここでは省略。

 

、不景気の原因
 経済学というのはきわめて単純なものである。経済現象のあらゆる質問に対して、「それは需要と供給がアンバランスだからです」という一つの答えを準備しておけば万事こと足りる。なぜ株価が暴落するのか? なぜ円高になるのか? なぜ銀行の利子がこんなに安いのか? なぜ失業率が5%もあるのか? なぜ政府はやたらに国債を発行するのか? これらはすべて、「それは需要と供給がアンバランスだからです」と答えれば正解である。

 同様に、「なぜ不景気や恐慌になるのか?」という質問に対しても、さしあたりは「それは需要と供給がアンバランスだからです」と答えることが理論の出発点となる。私たちはミクロ経済学で、一つの商品の需要と供給がどのように一致し均衡するかを学んだ。同じことを社会全体について当てはめて考えてみる。

 今、社会全体の1年間の生産額を総供給額とすれば、総供給はその国の国内総生産(GDP)とみなすことができる。一方、総需要とは日本製品を買ってくれる人たちであるから、これを分類すると「消費」「投資」「政府支出」「輸出−輸入」に分けることができる。 ここで、総供給と総需要が一致すれば、一国の経済全体が均衡する(=国民所得の決定)と考えられる。すなわち、

      総供給=総需要
          =消費+投資+政府支出+(輸出−輸入)

となるところで均衡すると考えられる。
 今、失業者が一人もいない理想的な経済状態(完全雇用)における総供給=Yとする。また、消費=Y、投資=I、政府支出=G、輸出=X 、輸入=Mとすると、上の式は

         Y=C+I+G+(X−M)・・・・・(1)

となる。 式の右辺は有効需要と呼ばれる。 (1)式は経済学のいちばん基本となる式であるから、しっかりと覚えておきたい。
 問題は、左辺の総供給と右辺の総需要が一致しない場合である。すなわち不景気とは、 (1)式の右辺の項目のどれかが急激に落ち込んで

         Y>C+I+G+(X−M) ・・・・(2)

となった状態をいう。
 そこで不景気の原因であるが、実際に統計をとってみると投資の変動が景気の振幅とほぼパラレルな波形を描いており、このことから不景気の原因は投資(I)の変動であることがわかる(下図参照)。経済の専門家は常に投資(特に民間設備投資)の動きに注目をしているのはこのためである。

 
1999年7月26日、日経新聞

 さて、ここで2004年度のデータを当てはめてみる。
   消費=278兆円、
   投資=92兆円、
   政府支出=114兆円、
   輸出=61兆円、  
   輸入=49兆円
 したがって、日本全体の有効需要総額は約496兆円であった。不景気とは

     総供給>総需要(496兆円)

となっている状態を言う。そして(総供給−総需要)の金額をデフレギャップという が、デフレギャップがある状態では、生産設備の一部は使われず、労働者も一部は失業してしまい不景気となる。たとえば、不景気が非常に深刻だった1998年末の日本経済の需給ギャップは、約40兆円に達していたことが日本興業銀行 (現、みずほファイナンシャル・グループ)のレポートで報告されている。

 

、有効需要管理政策
 前節から、不景気の原因は投資が急激に減少し、有効需要が不足するからであることがわかった。すなわち、
       YF>C+I+G+(X−M)
・・・・・(2)
となった状態が不景気なのである。
では、景気を良くするにはどうしたらよいか。方法はただ一つ、有効需要(買ってくれる人)を増やすことである。右辺のC、I、G、Xのどの項目でもよいから増やしてやることである。

Gを増やす方法(財政政策)
 有効需要の不足分を、公共事業を中心に財政政策を出動させることによって、Gを増やすのがいちばん手っ取り早い。財政政策はかならず効く。なぜなら、政府が直接お金を使うことによって、そのお金が次の人の所得となるからである。その人もまたお金を使うから、こうして次々に派生所得が生み出され、結果的には最初に投入した金額の数倍の所得が形成される。これを乗数効果という。このような政策の典型例がニューディール政策である。

Cを増やす方法(財政政策)
 消費はGDPの約6割をしめる。その意味では消費の動向は経済の好不況を見る一つの重要な指標といえる。しかし、実際に統計をとってみると、消費はあまり大きな変動をせず、安定的に推移していることが多い。その安定的な消費を確実に増やす方法は、減税を行なうことである。減税によって税金が戻ってくると、消費者はそれでさまざまな品物を買い、その結果有効需要が増大する。

 Iを増やす方法(金融政策)
 不景気の原因は、民間の投資が減少することによって引き起こされることが多い。それならば。いっそのこと減った投資を直接増やしてやればよいではないかという発想が生まれる。そのための政策が金融政策であり、具体的には次の 二つの方法がある。
 第一の方法は、公開市場操作(オープンマーケット・オペレーション)を行なうことである。これは、都市銀行などが保有する国債・手形などを日銀が直接買ったり(買いオペ)、売ったり(売りオペ)する政策である。不況期に買いオペをやれば、その分日本全体に流通する通貨量が増大し、それがコール市場の金利を引き下げ、その結果企業 への貸し出しが増え、投資が増加し、景気がよくなる。この政策は日常的に頻繁に行なわれている。しかもダイレクトに通貨量をコントロールできるため、非常に強力な政策である。
 第二の方法が、支払い準備率の変更である。これはいざというときに備えて、金融機関の預金の一定割合(現在は1.2%程度)を日銀に無利子で強制的に預けさせる制度である。もし支払い準備率を引き下げれば、各金融機関の貸し出しに回せる資金がその分増え、それが企業の投資を増やし、景気が良くなる。しかし、この政策はほとんど使われることはなく、実際、1991年にそれまでの1.75%から現在の1.2%(預金額2兆5千億円超)に引き下げられて以来変更されていない。いわば金融政策の変化球というところである。したがって、支払準備率の変更操作を、日常的に使われる公開市場操作や、金融政策の象徴としての公定歩合と同列に扱うことは不適切といえる。

(X−M)を増やす政策
 本来、輸出とか輸入は政策的にコントロールできない変数である。いや、正しくは「してはいけない」変数というべきかもしれない。国内の不景気を乗り切るために為替レートを切り下げる(=円安にする)政策は、相手国の報復を招きかねず、絶対にとるべきではない。1930年代の為替切り下げ競争が相手国の報復を呼び、結果的に貿易の縮小を招いてしまった苦い経験を忘れるべきではない。輸出を伸ばすために意図的に為替レートを切り下げるという政策は選択肢に入れるべきではないと考える。

 以上に述べた財政・金融政策をうまく組合せること(ポリシーミックス)によって、総需要と総供給を一致させていくのが有効需要管理政策である。今日では、ケインズ経済学によって樹立されたマクロ理論やその後の計量経済学の発展などによって、かなりの程度うまく調整されるようになった。


、もし、有効需要を作りすぎたら・・・
 今、YF>C+I+G+(X−M) の不景気の状態にあるとしよう。財政・金融政策の実施によって、右辺の有効需要が創出されたとする。そして、 YF=C+I+G+(X−M) という完全雇用が達成されたとする。 ところが、有効需要の創出効果はここで停止せず、完全雇用点の生産水準を超えて

        YF<C+I+G+(X−M) ・・・・(3)

となってしまったとする。
 この時日本経済にはどのような現象が生じるであろうか。
正解はインフレの発生である。社会全体としてこれ以上の生産能力はなく、しかもその供給量より需要量のほうが多いのだから、日本全体で物価が徐々に上昇するほかない。ときにはバブルを生み出す恐れもある。
 もしインフレを恐れて有効需要が不足すれば、不景気から脱出できない。しかし、有効需要が多すぎるとインフレになる。資本主義経済の運営は、まさに山の尾根を綱渡りするようなものである。右を見れば不景気の谷、左を見ればインフレの谷。どっちの谷にも落ちないように有効需要を管理することが政府に求められている。

 

5,合成の誤謬
 
一人でやれば正しいことも、みんなが同時に行なうと間違った結果や反対の結果が出ることを「合成の誤謬」という。現在日本が戦後最長、最悪の不況に苦しんでいる背景には、こうした合成の誤謬と呼ばれる現象が起きていると考えられる。
 たとえば、景気が悪いため将来の不安に備えて一人の人がせっせと貯蓄をしたとしよう。確かに彼一人がこうした行動をとれば、彼の財布にはお金がたまる。では、みんなが彼と同じような行動をとればどうなるであろうか。結果は、かえって財布のなかの貯蓄額は減る、が正解である。なぜなら、貯蓄をするということは、イコール消費をしないことである。その結果、社会全体が貯蓄を増やそうとすれば、もし他の条件に変化がなければ社会全体の消費は減少する。すなわち、
 Y=C+I+G+(X−M)

の式において、右辺のCが減少するため有効需要が不足し不景気になる。会社は儲からず、したがって、社員の給料も下がる。給料が下がれば(=所得が減少すれば)、貯蓄しようにもできない。結局、社会全体が貯蓄を増やせば、逆に総貯蓄額は減少してしまうのである。

 バブルが崩壊し土地と株が大暴落をした結果、両者あわせて1300兆円の資産が失われた。そのため家計は倹約に走り、企業もリストラと経営合理化・投資の抑制を行ない、財務体質の改善に奔走することとなった。個別にみれば消費者も企業も正しい行動をしていることは間違いない。しかし、マクロ的にみれば、それは合成の誤謬を引き起こし、日本経済を一層悪化させる 。

(コラム)経済理論は人類を救う!
 「作りすぎたから売れ残るのではなく、買う人が少ないから売れ残る」。ケインズはこう考えた。だから売れ残りが出て恐慌に陥った場合は国内の需要を増やしてやればよい 。これがケインズ経済学の核心である。確かにケインズ経済学の登場によって 第二次大戦後、資本主義国では「恐慌」を回避することが可能になった。 しかし、ケインズ理論が出現して、もはや70年近くになる。今、ケインズ理論では解けない問題が山積している。皆さんも経済学の新しい理論の発見に挑戦してみませんか?

 

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