1.地域貿易協定の種類
地域貿易協定には大きく分けて二つある。関税同盟であり、もう一つは自由貿易協定(FTA)である。関税同盟の代表例としては、ヨーロッパ連合(EU)や、南米5カ国で構成されるメルコスール(MERCOSUR)がある。また、自由貿易協定の代表例としては北米自由貿易協定(NAFTA)や、アイスランド・スイス・ノルウェー・リヒテンシュタインによる(EFTA)などがある。関税同盟と自由貿易協定の最大の違いは、域外からの輸入に対して共通の関税を課さなければならないか、異なる関税率を設定できるかにある。
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名称 |
概要 |
| 関税同盟 |
ヨーロッパ連合(EU) |
1967年にEC(ヨーロッパ共同体)が設立され、1993年にはマーストリヒト条約が発効しEUとなった。アメリカに対抗してヨーロッパ合衆国を目指す。 |
| メルコスール(MERCOSUR) |
南米共同市場ともいう。1995年発足。 |
自由貿易協定
(FTA) |
北米自由貿易協定(NAFTA) |
アメリカ、カナダ、メキシコ間に1994年に発足した世界最大の統一市場。15年以内に域内関税ゼロを目指す。 |
ヨーロッパ自由貿易連合
(EFTA) |
EEC(ヨーロッパ共同体)に対抗し1960年に設立。中心となったイギリスが抜け、影響力は低下。 |
| ASEAN自由貿易圏(AFTA)
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Aアジアにおける共産主義勢力に対抗する組織として、1967年にASEAN(東南アジア諸国連合)が設立された。
1985年のプラザ合意以後、日本企業が中心となってASEANなどアジア向け直接投資が急増したが、90年代に入ると中国へと進出先が移っていった。これに危機感を抱いたASEANは、
・ASEAN自由貿易協定(AFTA)(1993年)
・ASEAN地域フォーラム(1995年)
ASEAN10の完成(1996年)
など、矢継ぎ早に対策を講じた。1993年に発足したAFTAは、域内の貿易自由化を進め、外資の誘致や企業の生産性向上を目指す。
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| 地域協力 |
アジア太平洋 経済協力会議
(APEC) |
オーストラリアの提唱により、1989年発足。発足当初は参加国が12カ国であったが、現在では米国、中国、東南アジア諸国、オーストラリア、ロシアなどアジア・環太平洋地域の21カ国が参加している。
APECは次の三つの活動を柱としている。
1.貿易・投資の自由化
2.貿易・投資の円滑化
3.経済・技術協力
APECはほかの地域の統合とは異なり、参加国の自主性を重んじ、「開かれた地域主義」を標榜している点に特徴がある。日本からの輸出の74%がAPEC地域で占められている(2001年)。
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2.EU(ヨーロッパ連合)
ヨーロッパから戦争をなくするためにはどうしたらよいか。そんな発想から第二次大戦後、ヨーロッパを統合する計画が持ち上がった。特にドイツとフランスは、大陸にあってしかも国境を接していることもあって、最近の100年あまりの間に3回の大戦争をしている。
最初は1870年の晋仏戦争(〜71年)。この時はフランスが敗北し、ナポレオン三世がセダンで捕虜になったほか、アルザス・ロレーヌを失い、50億フランの賠償金を払わされた。フランスにはドイツに対する癒しがたい憎しみが残った。
機会があれば復讐をしてやろうという気持ちは、第一次世界大戦で敗北したドイツに向けられた。アルザス・ロレーヌを取り返したほか、1320億金マルクという、当時のドイツの17年分の国家予算にあたる天文学的な損害賠償を課した。しかし、そのことが新たな悲劇をもたらすこととなった。ヒトラーの台頭
・第二次世界大戦を招く一因となったのである。
1967年、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EEC(欧州経済共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)の3つが統合され、EC(ヨーロッパ共同体)が発足した。その後、1992年にはマーストリヒト条約が成立し、翌1993年にはECはEU(欧州連合)となった。現在27ヵ国がこれに加盟
し(2008年)、経済的統合のみならず、政治統合をめざして調整が進められている。2002年1月1日からユーロが流通し始めた。統合が完成すれば、ヨーロッパはいわば「ヨーロッパ合衆国」となり、それぞれの国はちょうどアメリカの州のような存在になる。
なお、近年、ヨーロッパ統合の目的は、当初の「ヨーロッパから戦争をなくする」という目的から、「アメリカに対抗する勢力の構築」、というふうに変化してきている。
3.日本のEPAとFTA
政策の転換
WTOの多角主義を重視する立場から、日本は1990年代までFTA(自由貿易協定)には批判的であった。しかし、NAFTA成立(1994年)後、自由貿易協定が急増してきたこともあり、日本は政策転換を図った。日本は2002年、シンガポールとの間に自由貿易協定を結んだのを皮切りに、FTAに積極的に取り組むようになった。近年では、EPA(経済連携協定)の推進にも積極的である。
FTA増加の背景
地域貿易協定(関税同盟+自由貿易協定)を結ぶ国が増加しており、現在205件に上る(2008年5月)。その背景には、次のような要因がある。
@WTO加盟国が140を越え、全会一致を原則とするWTOでは多国間交渉に時間がかかりすぎるので、短時間で自由化を実現できる地域協定を採るようになった。
A NAFTA(1994年)以降急増したことから、NAFTAが世界に与えたインパクトが大きかった。
B冷戦構造が崩壊し、従来の枠組みにとらわれず地域統合が進めやすくなった。
FTAからEPAへ
一方、モノやサービスの貿易拡大だけを目的とするFTAに代わり、近年増加しているのがEPA(経済連携協定)である。これは貿易だけではなく、外国人労働者を受け入れるルールや、お金の移動を自由にする投資規定なども含む。ちなみに日本は、EPAを結んだインドネシアから、今後2年間でインドネシア人看護師・介護士を千人受け入れる予定である。
最近10年間で、日本はシンガポール・メキシコ、ASEAN全体など9件のEPAを締結または署名している。そのうち7件が対アジア、2件が対中南米である。そのほか、韓国、ベトナム、インド、オーストラリア、スイス、サウジアラビアなどとも交渉をしている。
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国名 |
署名・発効年 |
| 締結済み |
シンガポール |
2002年発効 |
| メキシコ |
2005年発効 |
| マレーシア |
2006年発効 |
| チリ |
2007年発効 |
| タイ |
2007年発効 |
| インドネシア |
2008年発効予定 |
| 署名済み |
フィリピン |
2006年署名 |
| ブルネイ |
2007年署名
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| ASEAN全体 |
2008年署名 |
日本の経済連携に向けた取組(2008年7月現在)
EPA・FTAの効果
WTOの基本原則は、すべての国に同じ関税率を適用する(最恵国待遇)ことである。しかし、FTAはその例外で、協定を結んだ特定の国(地域)に対して、関税を撤廃できる。
したがって、FTA・EPAを結んだ国の間では貿易量が急速に拡大するなど、その効果は目を見張るものがある。たとえば、メキシコとEPAを結んだ結果、2004年から2005年にかけて貿易額で38.4%、対メキシコ投資額で242%増加している。
農業分野がネック
現在、日本は韓国などとも経済連携協定の交渉を予定しているが、交渉は難航している。最大のネックは日本の農業自由化問題である。WTOの協定では、自由貿易協定締結の要件として、「すべての貿易について10年以内の関税撤廃」を明記している。
現在日本の農業は、大豆やトウモロコシの関税はゼロであるものの、コメには490%、バター330%、小麦120%、豪州産牛肉には38.5%という高関税がかけられている。関税なしで安い牛肉やコメが輸入されれば日本の農家は太刀打ちできない。日本の工業製品の輸出攻勢を受ける相手国も事情は同じである。
日本の農産物全体の平均関税率は12%とEUの20%よりは低いが、米国の6%よりは高い。互いの弱い分野を守りながら妥協点を探るのは容易ではない。日本の農業がネックになって、米国や中国、韓国とのEPAはめどがついていない。
4.地域統合の行く末
こうした地域的経済統合が、今後どのように機能するのか。最悪のシナリオは、戦前と同じような「ブロック化」である。しかし、過去の苦い経験に鑑み、たぶんそうはならないと信じたい。理念としては、とりあえず統合できるところから統合しはじめ、近い将来、それぞれのブロックを接着剤でくっつければ、理論的にはやがて世界は一つに統合される可能性があると思われる。いま進行している地域統合はそのための一つのステップである、というのだが・・・。はたしてうまく行くか。
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