| 1、公務員の世界
(1)公務員の人数
20世紀になって政府の役割が増大し、行政国家と呼ばれるようになった。それにともない、公務員の人数も急増したl。
日本の公務員数(データは2007年)
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国家公務員 |
約59万人(
行政32万人、自衛官24万人など)。支払われている人件費は年間5.3兆円である。 |
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地方公務員 |
約300万人(教員89万人、警察官25万人など)。これに要する人件費は約22兆円である。 |
日本の総就業者数6600万人のうち5.5%が公務員ということになる。これを人口1000人あたりの職員数で国際比較すると、日本は32.5人で、アメリカ、イギリス、フランスの半分以下である。
(2)採用
国家公務員の採用試験次の3種類ある。
| T種試験 |
キャリア組と呼ばれる幹部候補生 |
| U種試験 |
地方出先機関の中堅幹部要員として採用 |
| V種試験 |
高卒対象 |
U種およびV種の合格者はノンキャリア組と呼ばれる。最近では、T種・U種は言うに及ばず、V種試験にも大卒の受験者が押しかけ、公務員採用試験はたいへんな競争倍率となっている。
こうした公務員制度の頂点に立つのは、もちろんキャリア組と呼ばれるエリート官僚たちである。2007年度は2万2000人が受験して、1581人が合格した。競争倍率は
14倍である。とくに人気の高い行政職は約4832人が受験して合格者はたったの48人である。競争倍率は実に100倍である。(詳しくは人事院のホームページを参照)。キャリア組は全部で約2万人ほどいるが、彼らはノンキャリア組とは昇進のスピードおよび最終ポストでまったく異なった待遇を受ける。
(コラム)国税庁
国税庁の職員は5万5583人(2001年4月現在)。そのうち、財務省採用キャリアが55人。国税庁採用キャリアが236人。あとはノンキャリア組である。国税庁に
キャリア組として入った後輩が、入庁6年目の28歳で「地方の税務所長になりました」という葉書をくれたときには、さすがに言葉を失った。これがキャリア組の出世かと思ったものだ。ただし、この慣行は批判され、95年以後「原則として税務署長に出すのは35歳以後」と方針変更されている。 |
(3)仕事ぶりと給料
一般に、エリート官僚というと何かと批判にさらされがちであるが、日本の高度成長を支えてきた背景には、彼らの努力があったことは確かである。公務員であるから、特別給料が高いわけではない。民間へ就職した大学の同期の仲間たちに比べれば、半分くらいの給料である。しかし、安月給であるにもかかわらず、彼らは実によく働く。
毎年、8月31日には各省庁から来年度予算の概算要求が出され、そのあと、12月22日ころに財務省の原案が出されるが、その間の財務省官僚の献身的な予算作成作業は涙ぐましい。残業時間は月に300時間を超えることもあるという。もちろん仮眠室もある。霊安室のような冷たい部屋なのだそうだが、
かつては(大蔵省にちなんで)内輪では「ホテル・オークラ」といわれてい
た。だが、それだけ働いても残業手当はわずか5〜6万円程度である。
もちろん、彼らは奉仕精神だけで働いているのではない。30年ほど勤めて、適当な時期に民間企業の社長や政府系機関の理事などとして天下りをする。そして、そこで今までの安月給を補填(ほてん)するのである。キャリア官僚の最高ポストである次官経験者の生涯収入は10億円を下らないとも言われている。
2、官僚たちの活躍
(1)法律の原案を作る
今日、官僚が大きな権限を持つようになった第一の理由は、社会が複雑化・専門化したことと関連がある。教科書的に言えば官僚の本来の仕事は、国会が決定した法律や政策を執行することである。しかし、社会が複雑化した現代においては、法案の作成にはきわめて高度な専門知識が求められる。そのため、国会議員だけでは法案の作成は困難になり、法案作成のほとんどを専門知識をもった官僚の助けに依存せざるをえなくなってしまった。その結果、官僚は国会議員の知恵袋として、政策の企画・立案段階から法案の作成にいたるまで、深くかかわることとなった。こうして官僚は、行政権だけではなく立法権にも大きな影響力をもつようになり、確実に権力を伸ばしていった。国会で議員が行なう質疑応答の原稿も、国会議員自身が書いたものより、官僚の手になるものの方が多い現実一つをみても、官僚が今日いかに大きな働きをしているかが分かるであろう。
(2)委任立法の増加
官僚が大きな影響力をもつようになった第二の理由は、委任立法がふえたことである。すなわち、法律では一般的抽象的なことだけを決めておいて、具体的な内容については政令や省令などの「命令」で定めるやりかたである(憲法第73条)。こうしておけば社会の情勢が変わっても、いちいち国会で審議をして法律をかえる必要はなく、臨機応変に行政の判断で対応できる。
(コラム)命令
議会の制定する法律に対して、行政機関の制定する法(政令や省令)を命令という。たとえば、学校教育について言えば、教育基本法(全11条)や学校教育法(全108条)などの法律で大まかな方針を定め、それをさらに詳しくしたものとして学校教育法施行令(=政令)を出す。さらにもっと細かな具体的な内容は、文部科学省の学校教育法施行規則(=省令)を定めるというふうである。 |
(3)許認可権の行使
これに加えて第三に、官僚は行政指導や通達、民間企業に対する許認可権の行使などを通しても大きな影響力をもつ。
3、行政の民主化
ところで、立法権と行政権のうち、どちらが国政の中心であるべきか。答えは明白である。国民が直接選挙で選んだ立法府こそが国政の中心であるべきである。いくら官僚が優秀であるとはいっても、たかが大学卒業時の1回のペーパーテストで合格した人たちが日本丸を引っ張っていくというのは筋違いというべきであ
り、そうした事態は、民主主義にとっては脅威であるとも言える。選挙で選ばれたわけでもない行政マンを、いかにして「国民主権」のもとに置くか。それが行政の民主化といわれる問題である。行政の民主化の方法としては3つある。
行政の民主化の方法
| 行政委員会の設置 |
行政権からある程度独立した合議制の機関を設置することにより、中立性を保とうとする制度である。具体的には人事院、公正取引委員会、中央労働委員会、選挙管理委員会などのほか、教育委員会や国家公安委員会なども行政委員会に含まれる。 |
| 情報の公開 |
情報公開条例や情報公開法(2000年4月より施行)を制定し、国や地方自治体のもっている情報を積極的に公開する |
オンブズマン
(行政監察官) |
スウェーデンで生まれたこの制度は、行政活動を調査し、必要に応じて改善を勧告する制度である。本来は公的機関として設けられたものをいうが、日本で公的に設置しているのは川崎市、新潟市、沖縄県などまだまだ少なく、代わりに民間組織として設けられた市民オンブズマンが活躍している。 |
4、行政改革
市場の失敗を補完するために、20世紀になって政府が民間経済に積極的に介入するようになった。しかし、そのことが逆にさまざまな弊害を引き起こす原因ともなった。財政赤字、企業競争力の低下、官業の非効率な運営などはその典型である。そこで、大きくなりすぎた政府の「ぜいにく」を削ぎ落とし、再び引き締まった身体(=小さな政府)にしようという動きが求められるようになった。
具体的には次のようなことが行われた。
| 省庁再編 |
2001年1月、それまでの省庁を再編し1府12省庁に改めた。建設・運輸・国土庁が統合され国土交通省に、郵政・自治・総務庁が統合され総務省に、また、厚生省と労働省が厚生労働省に統合され、医療保険、年金保険を扱う職員数
5万2千人の巨大組織になった。 |
| 人員削減 |
約115万人(2000年現在)いた国家公務員を、郵政事業(約30万人)の民営化や国立大学(約13万人)の独立行政法人化
などによって59万人(2007年)にまで削減した。 |
| 規制緩和 |
これにより競争促進政策を展開する。これまで日本の政治は、政界・財界・官僚による「鉄の三角形」と呼ばれる強固な結びつきのもとで行なわれてきた。その中でもとくに官僚は各種の規制や許認可権をテコに、産業界に大きな影響力を行使していた。その結果、日本の企業は国際競争力を失ってしまった。国際競争力を強化し、日本経済を立直らせるためには、
もっと自由に経済活動が営まれる環境を整えなければならない。 |
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公共事業の見直し |
公共事業が、かつての新幹線や東名高速道路などのように、新たな産業の発展に寄与するものならば問題はない。しかし、現在行なわれている多くの公共事業は、建設業界を救済するためのものであり、次の経済発展に結びつく効果はきわめて小さい
。現在日本の就業者数の約10%(660万人)が建設業に従事している。 |
(コラム)厚生労働省
厚生労働省の職員数は5万2千人で、財務省7万1千人、国土交通省6万2千人などと並ぶ大所帯である。これに所管する14の独立行政法人の職員数7万人弱を加えると、12万人になる。このうちキャリア官僚は約1000人で、入省8年目で課長補佐、20年目くらいから課長に就任する。
一方、扱う金額も膨大で、厚生労働省の年間の予算は一般会計83兆円のうちの22兆円を占める。このうち社会保障費は21兆6000億円である。2位の国土交通省5兆9千億円を大きく引き離している。
これだけの大所帯を一人の大臣で切り盛りするのはさぞかし大変だろうと思う。 |
(コラム)鉄の三角形
政界・財界・官僚のうち、いちばん偉いのはだれか?
実はこの三者は「三すくみ」の関係にある。官僚は各種の規制や許認可権をテコに財界に睨みをきかせている。しかし、その官僚も、選挙に選ばれた国会議員には頭が上がらない。しかし、その国会議員も、政治資金を財界に依存しているから財界に頭が上がらない。 |
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