|
1.光=生産効率の向上
押し寄せるグローバリゼーションの波のなかで、ヒト、モノ、カネは国境を越えて移動し、企業間の世界的規模の競争が一層激しくなっている。企業は生産効率を求め、国境を越えて世界的規模の分業を展開
する。自由貿易が進む現代では、一つの産業・業種が必ずしも1か所にまとまって立地している必要はない。生産活動を細かい工程に分け、それぞれの活動に適した立地条件のところで部品を作り、それらを1か所に集めて最終組み立てを行っている。
東南アジアの貿易構造は、以前はアジアが原料や食料を輸出し、日本が工業製品を輸出する「垂直的分業」が一般的であった。しかし、近年、日本企業がアジアに
生産拠点を持つようになり、中国、韓国、台湾、香港、ASEAN諸国との結びつきを強めている。
たとえばiPodというアップルコンピュータのヒット商品がある。この部品はアメリカ、日本、韓国など世界中から集められ、それらを最終的には台湾で組み立て
、世界に出荷している。こうした貿易形態を垂直的産業内貿易というが、中国の輸出・輸入ともに
機械が第1位である理由は垂直的産業内貿易が盛んであるためである。
グローバリゼーションによって、生産効率は極限まで高められる。それにより製品価格は安くなり、消費者の受けるメリットは大きい。
2.グローバリゼーションのもたらす影
(1)暗躍するヘッジファンド
世界の金融・資本市場の乱高下の原因の一つと噂されるのが、ヘッジファンドとよばれる資金だ。資金の出しては民間の投資家である。世界のファンド数は約9千、残高は1兆2千億ドルといわれる(2006年3月現在)。1997年のアジア通貨危機の原因となったほか、最近では超低金利政策をとる日本で資金を調達し、外貨に換えて利回りの高いアメリカなどで運用する円キャリー取引にもかかわっているといわれる。
(2)アジア通貨危機(1997年)
発展途上国が経済発展できない理由の一つは、資本が不足するからである。こういうものを作れば儲かると分かっていても、それを作るためのお金(=資本)がない。そこで、先進資本主義諸国は、豊富な資金を発展途上国に投資し利益をあげようとする。こうしてグローバリゼーションの波に乗って資本の自由化が進み、先進国の大量の資本が発展途上国に流れ込んだ。 しかし、もし外国資本が何らかの理由で発展途上国から一気に国外に流出
せばどうなるか。そうした悪夢が現実となったのが1997年におきたアジア通貨危機である。
1985年のプラザ合意以後、日本企業は円高を背景に、
盛んに東南アジアに生産拠点を移した。東南アジアには最新の設備と機械が導入され、それが「アジアの奇跡」と呼ばれるような経済発展をもたらした。
ところが1995年に円安ドル高が進むと日本企業の東南アジア
進出がぴたりと止んだ。ドルと連動していたアジア通貨は割高となり、東南アジア諸国は一気に国際競争力を失ってしまった。
「もう東南アジアから買うものは何もない。高すぎる」
という状態になり、95年頃から東南アジア諸国の貿易赤字はどんどん膨らんでいった。こうした状況の中で、ヘッジファンドを含む外国人投資家が一斉に東南アジアから逃げはじめたの
は当然のことであった。民間の巨額な国際資本が一気に流出したこのである。そのため為替レートはあっという間に暴落し、アジア通貨危機が発生した。
韓国、台湾、香港、シンガポールはかつては「アジアのフォードラゴンズ」として、アジア経済の躍進を象徴する存在であった。ところが、1997年にタイのバーツが急落したことをきっかけに、通貨下落はインドネシア、韓国などアジア全体に広が
った。この経済危機によって、インドネシアでは32年にわたったスハルト長期政権が崩壊した。
タイ、インドネシア、韓国の3ヵ国はIMFに支援を要請し、総額1400億ドル(約15兆円)の融資を受けた。ただし、IMFは金融支援と引きかえに、
@通貨防衛のために金利を高めに誘導すること、
Aインフレ抑制のために財政支出を抑えること、
などの政策をこれらの国々に求めた。この結果、各国は景気が悪化し、多くの失業者を抱えることになった。
アジア通貨危機は、グローバリゼーションがもたらした新しいタイプの通貨危機であると言える。
(3)サブプライムローン問題と世界経済
サブプライムローン問題に端を発した金融危機が、世界経済に深刻な影響を与え始めている。2008年には大手証券会社のリーマン・ブラザーズが破綻したのをはじめ、2009年には、クライスラーに続いてGM(ジェネラルモーターズ)も破綻した。グローバリゼーションが進む中で、アメリカ発の金融危機は「百年に一度の不況」に発展しつつある。
サブプライムローンとは、アメリカで利用されている住宅ローンの一つで、通常の融資を受けられる人々(プライム層)ではなく、信用力が低い低所得者の人々(サブプライム層)向けのローンである。審査が甘く簡単に融資を受けられる半面、返済が滞るリスクを考慮して金利は高く設定されている。このローンの特徴は、最初の2年ほどは金利が低く設定され、徐々に高くなり、最終的には10%を超える金利に跳ね上がる仕組みになっていることである。
アメリカでは低金利を背景に、2000年から2006年にかけて住宅価格が約2倍に急騰し住宅バブルが発生した。その結果、アメリカの住宅ローン全体の14%がサブプライムローンを利用し、その残高は1兆4000億ドル(約150兆円)にまで膨らんだ
。住宅ローン債権はリスクを分散させるために証券化され、国内外の機関投資家やヘッジファンドなどに広く売りさばかれた。
ところが、2006年、アメリカの住宅バブルが崩壊し、サブプライムローンの焦げ付きが急増しはじめると、サブプライムローン関連の証券
の価格も暴落した。証券を保有していた世界中の金融機関が被った損害額は20兆円ともいわれるが、なお、真相は不明である。
2006年 住宅バブル崩壊
2007年 サブプライムローン問題表面化
2008年 リーマン・ブラザーズ破綻
2009年 クライスラー、GM破綻
各国は国をあげて財政・金融支援政策をおこない、また、20カ国・地域(G20)金融サミットを開催し、景気後退対策について話し合っている。かつての世界恐慌の時とは違い、世界が協調体制をとっているとはいえ、今回の危機の克服には相当の時間を要すると思われる。
(4)原油価格高騰
サブプライムローン問題でアメリカ経済の先行きに不安を持った資金は、アメリカから流出し、原油市場に流れだした
。その結果、原油価格が高騰した。原油価格の高騰も、実はサブプライム問題と関連しているのだ。
(5)穀物価格の高騰
近年、トウモロコシや小麦の価格が急騰している。穀物価格を押し上げる一つの原因となっているのが、バイオ燃料への需要の増加である。
植物は二酸化炭素を取り込んで育つので、穀物、木、草などの植物から作
られるバイオ燃料は、燃やしても理論的には地球上の二酸化炭素の総量はプラスマイナス・ゼロである。
したがって、バイオ燃料は地球温暖化防止に有効だと考えられれている。
米国は原油高を背景に、トウモロコシから作られるバイオエタノールの増産を推進してきた
が、トウモロコシ価格の高騰は小麦からトウモロコシ生産への転換をうながし、これがさらに小麦価格の上昇を引き起こしている。また、ブラジルではサトウキビを原料にバイオエタノールが増産されている。
そこへもってきて、サブプライムロー問題で行き場を失ったマネーは、さらに穀物市場にも流れ込んだ。その結果、コメやトウモロコシ、小麦の価格は急騰した。
(まとめ)
| サブプライムローン問題、原油価格高騰、穀物価格高騰、地球温暖化問題、これらはすべて複雑に絡み合っている。
「光強ければ影また濃し」といわれる。国境を越える短期的な資本移動によって、私たちの日常生活に様々な影響が出ている。 |
|