記憶のメカニズム

 

短期記憶と長期記憶
 「認知心理学」とよばれる研究分野がある。これは人間が学習する際にどのように理解し、記憶するかというメカニズムなどを明らかにする。それによれば、記憶には「短期記憶」「長期記憶」という二つの貯蔵庫があるという。
 今、新しい情報が頭にインプットされたとする。その情報はまず短期記憶として蓄えられる。たとえば10桁の電話番号を聞いた場合、この情報はとりあえず短期記憶に貯蔵される。しかし、短期記憶の貯蔵庫は一時的に情報を保存するだけで、しかも容量が小さい。だから、せっかく覚えた電話番号も、それが短期記憶の貯蔵庫にとどまる限りは、数十秒も話をしている間にすぐに忘れてしまう。
 一方、長期記憶はいったんここに貯蔵されると容易に忘れることはなく、しかも膨大な量の情報を保存ことができる。その容量は
1000兆項目と計算する人もおり、まさに無限に広がる「記憶の海」である。実際、40年も前に受験勉強で覚えたことを今なお覚えているのは、それらが長期記憶に貯蔵されているからである。人間は個人の長い歴史を経て、実に多くの情報を長期記憶として貯蔵し、また必要な情報をそこから引き出しているのである。

       物理的刺激  →   短期記憶  →  長期記憶

 

入試は長期記憶の勝負
 ところが、皆さんの日頃の勉強方法を見ていると、その場しのぎの短期記憶に終始している人が少なくない。たとえば英単語の小テストをおこなうと、その日の朝や授業直前の休み時間を利用して必死に覚えようとする人の姿が目につく。確かにそうした勉強方法によってある程度の点数をあげることはできる。しかし、そうして得られた記憶はあくまで短期記憶であり、それがすぐに長期記憶に結びつくわけではない。小テストが終わったあときれいさっぱり忘れてしまうのであれば、またゼロからのやり直しである。砂浜に文字を書いても波があっという間に洗い流す。あれと同じである。その場しのぎの勉強をいくら積み重ねても、長期記憶に根ざした本当の実力は付かない。大学入試でものをいうのは「無限の海」に蓄えられた長期記憶である。

長期記憶への移行
 
情報を長期的に保存し頭に定着させるためには、短期の貯蔵庫から長期の貯蔵庫に移す必要がある。それは結構苦しい作業でもある。もしこの移行がうまくいかなければ、せっかく覚えた記憶もすぐに忘れてしまう。では、どうすれば長期記憶の貯蔵庫に移行させることができるのであろうか。
 キーポイントは、「理解して覚える」ということである。「なるほど、だからこうなるのか」というように理屈で覚えたことは、長期保存庫に移って忘れにくくなる。それに対して、意味も分からず丸暗記したことは、たとえその場では覚えたつもりになっていても、長期保存庫に移行しないためすぐ忘れてしまう。言われてみれば当たり前のことだが、中学校の時に、意味も分からず力ずく暗記して高得点をあげていた人は、勉強のやり方を変える必要がある。また、個人差はあるが、発音したり、手で書いて覚えると、長期記憶に蓄えられやすいという人もいる。そのほか、前回紹介した連想結合法も長期記憶には有効な方法である。

覚えた後、睡眠を取るのも効果的
 
長期記憶の貯蔵庫にうまく移行させることができるかどうかは、記憶した後の行動にも影響を受ける。綴りを覚えさせた後、時間がたつにつれてどのように忘却するかを調べるために、被験者の一方は眠らせておき、他方は通常のように目覚めさせておくという実験がある。この実験から、記憶した後睡眠を取った方がよく覚えていることが 証明されている。
 このことから、「就寝前の
10分か15分で暗記物を勉強し、十分に睡眠を取った後、翌朝5分で確認する」といった学習方法は非常に効果があると考えられる。一度、試してみて下さい。成績が上がりますよ。

学習方法のチェックに戻る

トップメニューに戻る