結婚しない人たち
2007年08月11日
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入院中に読んだ本の一つに『少子社会日本』(岩波新書 山田昌弘著 2007年)がある。1975年以降、日本でなぜ少子化が進んだかを論じた本である。今までにも少子化を論じた本はたくさんあるが、この本は今までの切り口とは異なった視点から論じていておもしろい。
これまで多くの本は少子化の原因として、@晩婚化、A女性の高学歴化、B女性の社会進出、C仕事と家庭の両立が困難なこと、D保育所の未整備、E子育てにお金がかかりすぎること、F結婚観の変化(=結婚しないという選択しもOK)、G核家族化、などを挙げていた。
しかし、山田はこれに反論する。世間では、女性が高学歴化し社会進出した結果、晩婚化が進み少子化が進んでいるとよく言われるが、これは因果関係が逆
であるという。つまり、多くの女性は本当は今やっている仕事にそれほど魅力を感じているわけではなく、できることなら結婚して退職し専業主婦になりたがっている。ところが適当な相手(=高収入の男性)が見つからないから、仕方なく仕事を続けているというのである。
また、仕事と家庭の両立が困難なことが少子化の原因だとされ、保育所さえ整備すれば少子化に歯止めがかかるとも言われているが、そうした対策はキャリアの女性には有効であっても、大半の女性には効果がないという。
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結論として山田は、日本の少子化は主として「若者収入の不安定化」によってもたらされていると説明する。1971年にドルショック、1973年にオイルショックがおきて日本は低成長時代に突入した。1990年にバブルが崩壊してからは、若者の雇用環境は一層厳しくなった。フリーター、契約社員、派遣労働者が増大し、それに追い打ちをかけるように成果主義が導入され、正社員といえども給料が上がるかどうか分からない時代になった。
山田によれば「男性の結婚しやすさは、年収でほぼ説明がついてしまう」のだそうだ。女性が男性に求めるのは「経済力」であり、男性が女性に求めるのは「容姿」であるという。市場主義の導入によって、それなりの所得がある人達はさっさと結婚できる。しかし、収入格差が広がった結果、低収入男性の多くが女性から結婚対象とは見なされなくなっている。その結果、結婚を先送りしたり、結婚を諦めたりする男性が増えている。
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ところで、男も女も9割の独身者が結婚願望を持っているのに結婚できない。山田によれば、そうした状況を助長している原因の一つが親の経済水準の上昇であ
るという。
われわれ50代の人間からすれば、小さい頃はどの家も貧乏だった。だから、結婚しても生活水準が下がることを恐れずに結婚することができた。ところが、日本が経済成長した結果、親が裕福になり、そうした裕福な家庭で育った子どもは、結婚により生活水準が下がることを嫌うようになった。マンションに住みたい。車も欲しい。海外旅行にも行きたい。子どもには習い事もさせたい。そうなると、女性は結婚相手に一定以上の収入を期待するようになる。結婚はお互いにメリットがあるからするのである。結婚して生活水準が下がるなら、結婚しないでおこうとするのはある意味で合理的な選択である。
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山田によれば、以上述べたような生活水準の低下を恐れることに加えて、欧米にはない「パラサイト・シングル」という現象が晩婚化に拍車をかけ
ているのだという。
男性は所得の将来見通しが立たないなかで、ある程度稼げるようになったら結婚しようと思いながら、とりあえず親元で暮らす。
また、女性も親と同居しながら、いつか「星の王子様」があらわれるのをむなしく待っている。とりあえず、親と同居していれば低収入でもそれなりの生活水準を維持することができる。こうして晩婚化はやがて非婚化へと発展する。日本の少子化問題は実は経済問題だ、というのがこの本の結論である。示唆に富む1冊だった。
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