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読書記録 (9)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Falantaj muroj  (Trevor Steele)


(22.9 x 15.1 x 1.1 cm: pp 160: 1997 年刊行)

読書メモ
*UEAの事務局長をしている Steele さんの旅行記集。といっても、とても信じられないような作者自身の体験が語られる。これが Steele 流ともいうべき、大げさな表現、皮肉一杯のいいまわしの「総合商社」ともいうべき本。

*Steele さんは一体何者だろう、と考えさせられる。好奇心旺盛な万年青年か。共産主義の破綻を詳しく分析している箇所を読むと社会科学者か。この本では各地で、英語、ドイツ語、そしてエスペラントの語学教師として稼いでいるのだが。

*この本は世界地図を手元に置いて読むと良い。バルト3国、旧東ドイツ、ポーランド、スペイン、ブラジル、オーストラリアのいくつかの地名になじむことができる。

*普通の旅行記なら、作者が見聞をひろめる話だから読者も得るところがあるだろうが、この本はそうではない、と序文に書かれている。さらに、ポーランドで将来の伴侶となる人に出会ったが、それについては書かない、60年代後半のドイツのことは "Apenaŭ papilioj en Bergen-Belsen" に書いたとある。次に私が読む本は、当然、それになる。Steele さんをもっと知りたいので。

*ドイツへ戻ろうと、汽車でポーランドに入り、通関でビザなしであげられる。この時、同じく汽車から降ろされた日本人と一緒に、深夜、駅の待合室で取調べを待つ話がある。日本語で「ありがとう」しか話せず、会話がほとんどできなかった、と。

*日本に関してもう一つ。オーストラリアで thongs と呼んでいる履物は日本の zorioj にあたる、と(p.154)。Steele さんは日本に滞在したことがあるのかも。

* tralegis: 10. 8. 2002



あらすじ
*「崩壊する壁」と題して、17章に分け、1992年前後(ゴルバチョフによるペレストロイカと、彼の失脚の頃に相当)のソ連邦からロシアへの時代のキエフでの体験、リトビアでの生活、ポーランドで、そしてライプチッヒでの生活、その間のポーランド経由でのウィーンへの旅行が語られる。それらがこの本全体の8割、前半の約120ページをしめる。

*3ヶ月分の月給で買った自転車、それもやっと見つけた自転車が、乗ってから小一時間もしないうちに壊れてしまう話。どこでも大行列をしないと物が手に入らない話(こんな楽しい買い物に比べたら、西欧での買い物は退屈きわまりない!と)。通関の役人の横柄さ、怠慢さ。

*この夏(2002年)、北米の夏期学校で、ロシア人教師のメルニコフさんからさんざん聞かされた信じられないような話を、 Steele さんから改めて沢山聞くことになった。

*その後ろに、5〜10ページの短編が四つ、すなわち、
 ・1967年のモーリシャス (大通りを一歩はずれると、すざましい貧困のさなかにある現地の人たちを目撃することになる)
 ・1971年のスペイン (著者は、バルコニーに現れて群集にこたえるフランコ将軍を見る)
 ・1977年のブラジル (エスペラントが共通の言語である、共同生活村、Bona Espero の当時のまだ過酷な様子がえがかれる。著者は不思議な心霊治療で腰痛をなおしてもらう)
 ・1993年のオーストラリア内陸部 (ライプチッヒでもらった100年前のオーストラリアの旅行記に刺激されて、ブリスペーンからダーウィンに向けて一人旅にでる。途中で、一人住まいをしている奇妙な男に出会うお話)。
 いずれのお話も語り口が面白いので楽しく読める。

*東ドイツがお荷物になっていること、失業者の増加、ネオナチの台頭。さらに、鳥かごの生活(不自由だが食べてゆけなくなる心配はなかった)から、ジャングルの生活(市場主義経済。自分の食事は自分で手に入れなければならない)に変わってしまった、と旧体制にノスタルジーを抱く人も。いろいろ考えさせられる挿話がたっぷり。


 

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