*作者は、1929年生まれ(おそらくマルタ島で)。題名からは、そしてはじめの2、3章からは、もっと別のラブロマンスのようなものを想像したが、後半は一貫してドイツとイタリアの爆撃機による激しい攻撃に、マルタ島に暮らす人たちがいかに耐えしのんだかが話の中心に据えられる。
*マルタ島はジブラルタル海峡とエジプトを結ぶ中間点にあり、枢軸国側にとってはどうしても手に入れたい拠点となった。英国からの護送船団(コンボイ)による食糧補給が止まれば島の人たちは生きのびれない。
*空襲警報を告げる教会の鐘の音で、防空壕へ急いで逃れ、お祈りを唱えながら警報解除の鐘の音を待つ人たち。強がりから防空壕へ入らないで外にいたため、爆弾の破片にあたって死んでしまう若者。連日連夜の空襲でノイローゼ気味になってしまい、やけくそで危険を承知で離れ島の教会へ巡礼に出かける人たち。シェルショックで気が触れてしまった警察官。空爆のあとのけが人の手当てを終えた後、うっかりケーブルを踏んで爆死してしまう医師。結婚式の最中に空襲がはじまり、気もそぞろで式を続けざるをえなくなる新郎新婦と縁者たち...
*空爆の克明な記録とともに数々のエピソードが語られるが、特に、護送船団が、敵側の激しい水雷攻撃に耐えてマルタの港に着いたとき(1942年11月16日)、島民たちが旗を打ち振り総出で歓迎する場面は圧巻である。
*何年も前に書かれた原稿が2002年になってやっと出版されたと思われ、エスペラント文に古さ、堅さを、私は感じるが、それにもかかわらずこの本には大きな魅力がある。それは、「昼間だけは酔っていない」といわれるワイン好きのクォルミの村人たちがピクニックに持って行くお弁当の豊かな中身(戦時中とはいえ、闇市場で工面して)やら、結婚式の質素な宴の様子、など、マルタ島の人たちの世界大戦当時の暮らしぶりを知ることができるから。なお、表紙のデザインはジョエル・ブロゾフスキーさんである。
*バレッタという都市の名前だけが記載されている小さな島を世界地図を出してきて見つけたり、なるほどこの島はイタリア本土からは十分離れていて、当時の艦船や飛行機で攻め落とすのは大変だったろうな、などと納得したり。
*しかし、この本はやはりこの時代とともに生きた画家と医者とバレリーナの物語である。マルタ島の包囲がついに解かれて人びとが、題名のように明日への希望を取り戻す物語である。
* tralegis: 2003.2. 24.
あらすじ
*全23章のタイトルを以下に掲げた。おおよそのお話の流れが想像できると思う。
登場人物は、主人公の画家、フレデュー・フロレス。 彼と結婚の約束をするバレリーナのセレスティン・ビジョー。 彼女を横取りしてしてしまう医者のミケル・ブル。 医者の姪で、のちに画家と結婚するミリアム、らである。
*第1章、劇場にて。
第2章、後援者。
第3章、予期せぬ再会。
第4章、嵐。
第5章、葬式。
第6章、友人たち。
第7章、戦争。
第8章、開戦。
第9章、ミリアム。
第10章、病院にて。
第11章、駆逐艦「イラストリアス」。
第12章、「ガチョウ」と呼ばれる警察官。
第13章、水雷艇。
第14章、結婚式。
第15章、巡礼。
第16章、巡礼の地、ジョウデーへ。
第17章、その間に。
第18章、巡礼の終わり。
第19章、猫。
第20章、全てが欠乏して。
第21章、食料を運ぶコンボイ。
第22章、仲人。
第23章、虹色の栄光。