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最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (223)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Krokize de mia ĝardeno (István Nemer)

『スケッチ、わたしの庭』(イシュトヴァン・ネメレ) 


(29.6 x 21.0 x 0.3 cm: pp 250: Kooperativo de Literatura Foiro 社;ローザンヌ(スイス)1992年)
(  KLEG 図書部より 950円  )

Unuvorte
*自然派ネメレさんのショート・ショート集。


読書メモ
*珍しく A-4 版大の、絵本に見られるような大型本。文字も大きく、光沢紙への印刷なのでくっきりしていて読みやすい。1頁37行、1行70文字前後とゆったりしている。表紙絵はセザンヌの風景画のクローズアップである(左下隅にサイン)。

*裏表紙のキャッチ・コピー(原文と同じ行送りで訳す):
  スケッチ、わたしの庭
  は、イシュトヴァン・ネメレの一番目の作品として
  西欧の出版社に現れたのだが
  次のように考えることが出来るであろう、
  最小限主義のまぎれもない作品である、と、
  それはわれわれの文学ではまだ新しいジャンルであるが。
  自分のそのスケッチで、ネメレが結びつけるのは
  中欧の好みに合う掌編小説と
  典型的なのはイシュトヴァン・オルケニー(ひとりの名をあげるとすれば)だが
  自身の身辺にある現実の観察と、だ、
  そこでは、シンプルな行為、物、単語が
  新しい次元を見出すのだ。
  そして、この新しい次元でネメレは、
  深遠な潜在的意義を見出すのだ。
  このハンガリー作家の貢献は、
  そのオリジナルな異形によって、われわれの文学を豊かにする、
  内容的に。そして、形式としても多くの層にとっては興味深いものだ、
  エスペラント文学の読者層の。

*下の「あらすじ」欄にあるとおり、この冊子に19編の作品が収められている。多くが2頁で終わる。週例会などの初心者用の読み物として、最適の長さだ。

*超高層タワーとか、地下鉄、高速道路を憎み、樹木や野鳥、魚に語りかける、犬好きのネメレさん。その人物像が、 短い作品のいくつかからもうかがうことができる。

*本作品に出てくるめずらしい単語、新語、ことわざ、言い回しなど。
・'bonveteri' 「好天になる」 … Se bonveteris, en libera tago, li eĉ la tutan tempon restis tie.
・Viro ne plendu.
・La boneco povas esti nur altruista. (利他主義者の) … Se vi antaŭ bonfaro komencas kalkuladi, ĉu ĝi estos bona negoco, aŭ ne - do tio ne estas bonfaro, eĉ se vi ne volas tion kredi.
・'someri' 「夏になる」 … La meteno estis malklara, kvankam plene someris. Fruaŭgustaj nebuloj sidis sur la montetoj, blue, paceme.
・「しっぽを振りながら」 … La besto vostumante komencis manĝi.  もちろん、ここでは動物(la besto)は犬。
・指示詞と代名詞だけで形容詞を作る。  … Por ĝi la karbo estis fremda, malbonodora, ne ĉitiea aĵo.
・Silento estis reĝo; nenio ribelis kontraŭ ĝi. … ことわざ?
・'partituro'  「 [音楽] 総譜、総譜表、スコア;楽譜、譜面 《エスペラント日本語辞典》」




* tralegis: 12. 23. 2011.
  

各ショート・ショートのあらすじ

『家』(La domo) … 5 頁
  若い二人がこつこつと何年もかけて家を建てる話。ついに完成したときには...

『フィーバー』(Febro) … 7 頁
  その男を見てすぐこいつは変人だと分かった。ぼろをまとい、がっしりした靴を履き、ひげ面だが怖くはない。「だんなさま、水を一杯」と、戸口に立って言う。テラスへ誘い、ミルクを出してやる。遠くから歩いてきて、まだこれから遠くへ行くのだという... … 胸を打つ秀作。わすか2頁なのに。

『怪物と騎士』(La monstro kaj la kavaliro)  … 9 頁
  廃墟となった砦に、三つ目の巨人で地上に漂う怪物が住んでいるという。夜に現れ、犬がほえ雌鶏や子羊が消えてなくなる。ある春の日、ピカピカの剣を携えた騎士がやって来た。村人に怪物を退治してくれと頼まれる...

『悲惨な恋人』(La fatala amanto)  … 11 頁
  リンダには26歳、夫も恋人もいた。彼女が住んでる地方では、そんなことは当たり前だった。彼女は南部の出身で、その南の気質そのままだった。夫は40歳近く、怠け者で、家にほとんど金を入れず、飲み屋で赤ワインを飲むのが常だった。離婚も考えたが、お金がかかりそうで、裁判沙汰も面倒だった。リンダが恋人に言うことには「聞いて、ロベルト。わたしたち、家を売るわ。あんたのお金と合わせて、南へ行こうさ。」...

『船長』(La kapitano)  … 15 頁
  船長は出発を前にして、どんな危険が待ちかまえているかをちゃんと話した。それでも彼らは応募してきた。最初のうちは彼らは恐れなかった。船は嵐に会い、帆は破れマストは折れた。飲み水は腐り、カビの生えた小麦粉でパンを焼かねばならなかった。それでも彼らは恐れなかった... … 新大陸発見の少し前は、船長も船員もそんな風だったかも。

『庭』(La ĝardeno)  … 17 頁
  わたしの父は庭で多くの時間を過ごした。母もわたしもなぜ彼がそんなに庭に出たがるのか分からなかった。庭は狭い緑の四角だった。ブドウ、イチジク、タマネギ。西洋ナシ、プルーン、リンゴ、クルミ、アプリコット。日陰には、えぞイチゴとスグリ... いま、わたしも父の歳、土が呼びかける声が聞こえる...

『早朝の出来事』(Frumatena histrio)  … 19 頁
  当直のベッドで、警部がうとうとしていると電話が鳴る。「下へ降りてきてください。男が来て、牢に入れてくれと言っています。」男は、作家で、急坂を無理やり登らせようと馬方が馬をぶったたいているので目が覚めた、腹が立ったので怒鳴り散らしている親方の鞭を取りあげ親方をひっぱたき、怪我を負わせた、と言う...

『屋根裏』(La subtegmentejo)  … 23 頁
  年老いたヨゼフは口癖だ。「俺が死ぬ日がきたら、それをするだろうよ。」と、言うのは。何かいやなことをするとき、あるいは、仕事をしたくないときに。その胡桃もそうだ。家内はもう百回も言っている。「胡桃を屋根裏へ、よ、ヨゼフ。この秋から階段の下に置いたままで、カビが生えるわ。五分ですむでしょ、ヨゼフ」...しかし、老いの身には階段がこたえるのだった。

『助手』(La helpisto)  … 27 頁
  屋根葺きのところへ親方が若い助手を連れてきた。無口な職人と若者の、昼弁当を介しての何気ないやり取り... …ほのぼのとして心温まる。

『あなたの視線の陰に』(En ombro de via rigardo)  … 30 頁
  空しくあなたはわたしを見つめている、わたしをあなたは見ていない、わたしではない、あなたが見ているのは...わたしは隠れている。あなたは、わたしがどこにいるかさえ知らない... …こんな風な書き出しである。

『預言者』(La profeto)  … 33 頁
  その預言者はわたしをじっと見つめた。彼の緑色の目に驚きの色が浮かんだ。「もっと早くどうして言ってくれないんだ、あんた。喉が乾いているのなら、わたしのボトルの水を飲んでくれ。」水を飲んでから私は言った。「わたしがどんな男であるか何も知らないのに、あんたはどうして自分の水を差し出すのだ?」「あんたがここにいて、喉が渇いているからだ。」...

『聾唖者』(La surdmutulo)  … 37 頁
  この春、その天文学者は庭の手入れや使い走りにと、聾唖者をやとった。学者は妻に心配ないという。彼は唇を読むことが出来るから...

『八月』(Aŭgusto)  … 39 頁
  『屋根裏』とよく似ている。石炭を冬に備え、高台にある家の地下倉庫に運び上げる話。何年も前に妻を亡くし、来年の春まで自分も持つだろうかと思いながら... … 淡々とした語り口で、身につまされる。

『聖者』(La sanktulo)  … 43 頁
  森のはずれにやって来たわたしは疲れていた。村が山のふもとにのぞまれた。平和だ。気に入った。ハイウェーからも離れている。ひとまず放浪するのはやめにして、もう一度、聖者になろう。わたしは森のはずれに家を建てた。周りで何人かの村人がわたしが働いているのを見ていた... … 結末は容易に想像がつく。

『ひよこ』(La kokido)  … 45 頁
  そのひよこはトラックから落ちたに違いない。そこは道がカーブしていて道もでこぼこだから。壊れたケージも転がっていた。 … 筆者はそのひよこを家に持ち帰る。

『ドラゴン』(La drakoj)  … 49 頁
  北部山岳地方からやってきて3年になるアーノルド。毎日、地下鉄で通っている。地下鉄のトンネルから響き渡る轟音はいつも彼に、禿山の冷たい洞窟に住むドラゴンを思い起こさせる...

『地獄から来た男』(La inferulo)  … 51 頁
  大惨事の生き残りとして、マイクの前で証言を残す「メトロ」で働いていた技師、バーティ・ニコルス。地下鉄百周年記念行事として執り行われた、バルテリウス作曲の地下鉄のトンネルを利用した音楽とは?

『木』(La arbo)  … 55 頁
  わたしはいつも夜明けに起き出す。明るいばら色の光がためらいながら屋根を照らす...穴を掘り、まだ小さな木を植える...  「この木はなんて大きいんだ、おじいちゃん」と言われたとき、わたしはまだ泣くことが出来る。わたしは本当に涙を流す。幸せなことに。だから、木よ、育ってくれ!

『塔』(La Turo)  … 57 頁
  その「塔」はもう何年も前から建築されている。いまや、石を運ぶ者も、壁を塗る者も、技師も二代目だ。誰が、なぜ、その「塔」の建築を命じたのか、今では誰も思い出せない... 「塔」が大文字で書かれる。シュールなカフカの世界?



 (2011. 12. 24. 最初の書き込み。)

 

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