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最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (208)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Vismar (István Nemere)

『ヴィスマール』 (イシュトヴァン・ネメレ) 


(20.0 x 13.0 x 1.1 cm: pp 192: Eldonejo ≪Impeto≫;モスクワ;2008年)
( 2010年3月、KLEG 図書部より;2,500円 )

Unuvorte
*La hundo - staras. 本作品より。 kuras ではない。


読書メモ
*淡々と、犬との心の交流が深まってゆくのを記述しただけなのに、そこそこ感動を覚えながら読み終えた。『井戸の中の蛇』 の著者の紹介記事にに、ネメレさんは現在犬や猫を飼っていると書いてあったのを思い出した。その部分を以下に採録する。私有のちょっとした森があるなんて、うらやましい。
   István Nemere kun sia familio (kaj multaj hundoj kaj katoj) vivas fore de la urboj, sur la hungara ebeno en vilaĝa domo, meze de sia propra arbareto.

*3頁に献辞がある。
  「イローナに感謝を込めて。彼女は私が最悪の時も、最高の時も一緒だった」と。私が参加した北米の夏期講習会のときの先生だった、あの素晴らしいイローナ・コートニーさんのことではないと思うが...

*裏表紙のキャッチコピー:
  ヴィスマールは若者ではない。悲劇的な過去を持つ孤独な男であるが、進んで人助けしようと思っている。その犬は、名前を持たないが、恐怖を生き延びた。そして、彼らは出合った。人と動物の間に真の友情が生まれるのか?。

*犬が好きな人がこの本を読んだら、ネメレさんのように犬と接してみようと思うかもしれない。橋の設計・建設という仕事を不当に非難され、獄にまでつながれて人間不信に陥った男と、全身傷だらけで骨折するまで殴られ捨てられた犬とが、お互いに魂を通わせるようになるまでの、感動的な話である。

*ネメレさんの作風が変わったのだろうか、あるいは、歳をとったからか。いつものストーリー・テラーだなあと感心させられる、あの波乱万丈、手に汗握るといった展開が無い。文体も乾いた感じで俳句のように短く単語を並べただけといった箇所が随所にある。固有名詞も出さない。大文字の Urbo とか Doktoro などで済ませてしまう。

* Vismar は散歩しながら木や草に、鳥や蝶々に話しかける。もちろん、La Hundo にも。主人公もその著者も自然主義者なのだ。

*La Helpisto はイスラムの移民。彼を通じて、イスラム教徒はネコは良いが、イヌは嫌う、ということを知った。 Vismar は働きづめに働いてせっせと国へお金を送るこの男に、西欧人は別の暮らし方、生活の楽しみ方をしているということを知らせたいと思っている。

*その Helpisto には時制と対格語尾を無視したエスペラントを話させ、 Gina には、早口ということで単語間を空けないエスペラントを話させる。

*面白い言い回し、ことわざ、珍しい単語など。
・La ĝardeno estas mirakla. Eta, kiel tiu de la japanoj, kaj estas en ĝi ne tro multe da kreskaĵoj. Malnovaj arboj ĵetas ombregojn.
・Li solvas enigmon, aŭ sudokuon? Ĉar videblas lipe, ke li kalkulas mute. …「数独」
・Ĝia salivo estas mirakla medikamento, sed tio nun nocus. … = malutilus
・Poste ŝi (La Knabino) iras en la kontoron, alportas la digitalan fotoaparaton, faras pri la hundo kvin-ses fotojn kaj senvorta reiras. … 「デジカメ」
・Vismar vidas, ke la fluaĵo venas en la hundon, li scias, ke tio ne estas medikamento, nur salo fiziologia. … 「生理食塩水」
・Ĝi (la birdido) mem disrompos la muron de sia nestmalliberejhejmo. … 長い単語(合成語)! 「卵殻」のこと。
・La Doktoro subite ne scias, kion fari, poste li komprenas: unuas la homo. … エスペラントならではの unu の使い方! 「(手当ては)人が先だ」
・Li jam estis sur la moviĝantaj ŝtuparoj de la subtera fervojo, la almozulo vane postkurus lin por eble surgenue danki la donacon -- nu, eble se li ĝenerale volus danki la donacon. … 「エスカレーター」
・Eble vere la tempo estas la plej bona kuracisto, ĝi povas forigi certajn dolorojn.
・Nun alias la situacio. Vismar estas preta ĵeti sin inter la Hundo kaj la atakitaj homoj -- unu-du vundoj pli multe, ĉu gravas?.. … alia を動詞に!
・La Doktoro kaj Vismar obsevas ĝian voston, onidire tiu estas la montrilo certa de la animagordo besta. … 犬の尻尾は「指針」!
・La memoro de la estis-homo pli forte vivas ankoraŭ en la Hundo, ol la estas-homo, la nuna mastro. … estis と estas を形容詞的に使う!
・Multaj stultuloj ĉi-tempe trinkas pseŭdo-fruktaĵojn kaj kvazaŭ-mineralakvojn, kiujn la fabrikisto plenigis el la krano, milionojn da boteloj tagon post tago. … 「ミネラル・ウォーター」
・Per sia hejmeca movo strebas sciigi al la besto, ke tiu ĉi estas lia hejmo, li hejmas, tial li faras tion. … hejmo を動詞に!
・fatamorgano … = miraĝo
・belvedero … = belvidejo
・Li prenas la stabilan telefonon, enprogramita jam estas la azilo, sufiĉas puŝi la butonon numero unu. … 「固定電話」で記憶させた電話番号に「メモリー」機能でかける。
・kumuluso … 「入道雲」
・Ankaŭ morgaŭ estos tago... Jen, tio estis lia adiaŭo por hodiaŭ. Jes, ankaŭ morgaŭ estos nova tago, ili esperas, ke estos tago senklopoda. ... … 「明日がある...」 ≪風と共に去りぬ≫での、スカーレットの有名なセリフ、"Tomorrow is another day!" を思い出す。


* tralegis: 2010. 8. 8.
  



主な登場人物 -- ほぼ出てくる順に 

Vismar
   … 元、橋梁技師。62歳。
Cicero
   … Vismar の飼い猫。
La Doktoro
   … 小柄な獣医。60歳。捨て犬収容所も担当している。
La Knabino
   … 捨て犬収容所で会計、渉外などを担当しているオールドミス。
La Helpisto
   … 捨て犬収容所の雑用係。イスラム移民。
Gina-Georgina
   … 体ががっしりした、早口で話す家政婦。Vismar の家に週2回通ってくる。
La Hundo
   … 大型犬。瀕死の状態で収容所に運ばれてくる。手当ての結果助かる。Vismar が飼うことになる。
La Urbestro
   … 住民の苦情を心配し犬の様子を見に来る。


全12章:その内容

第1章  Vismar は人里はなれた、一軒家に住む60過ぎの男。人っ子一人いない橋を渡っていると向こうから犬がやってきて、その橋は間もなく崩れ落ちてしまう、という悪夢が冒頭に。彼は数年前に都会での生活に見切りをつけた。庭に手をいれ池を作り日本風にした。金魚も入れた。週に一回ほど丘の上にある老人ホームへリュックで必需品を運ぶ。   … 3頁

第2章  次の日。道を下って別の施設へ。捨て犬収容所。現在、64匹。雑草に話しかけながら、草刈の奉仕作業。夜遅く家へ帰ると、門柱の上に Cicero がうずくまって主人の帰りを待っている。   … 18頁

第3章  朝食を終えるとほとんど同時に Gina がやってくる。追い出されるように収容所へ出かけるとなんだかただならぬ様子。全身傷だらけの大型犬の周りに Doktoro, Knabino, Helpisto が集まっている。まだ血が流れ出ていることから、死んではいない。Vismar は費用は持つから手当てしようと提案。   … 34頁

第4章  犬に付き添って寝るようになってから、数日。悪夢をあまり見なくなっている(私見:橋の設計ミスで裁判沙汰となり刑務所に入れられたらしいことが分かってくる…7.27. の時点で;日本の耐震偽装事件がヒント?)。包帯を替えようとして麻酔注射をする際に Vismar は犬にかまれるが臆しない。レントゲンを撮る費用を持つと申し出る。   … 47頁

第5章  制服を着た男たちが家の戸をたたいたのは夢ではなかった。橋の設計者として名を成し、コーランを模したモスクまで、アラブの国に造ったというのに、自分の造った橋が崩落し14人が死亡した。逮捕され刑務所へ入っているうちに妻と離婚、娘は気にいらない男と結婚し去ってしまった。一方、犬の傍らで点滴の番をしながら添い寝する生活を続けていたある日、犬が立ち上がる。   … 63頁

第6章  郵便配達夫が大型の封筒に入ったお詫びの書類を届けに来る、いつか来るはずと淡い期待を抱く Vismar だが、その日配達されたのは銀行からの投資の勧め...   … 81頁

第7章  Gina に追い出されるようにして収容所へ行くと例の3人が事務所の前のベンチにただならぬ様子で座っていた。巨大な犬を彼が連れ出す日だということは3人とも暗黙の内に分かっていた。犬はケージからおとなしく出てくるのか、Vismar におとなしく従うのか。もし、何かのきっかけで本能的な行動に出ると、誰も到底その犬にはかなわない。何しろライオンかと思わせるほどの大きさなのだから。流血の惨事になることは明らかだ...。   … 96頁

第8章  Vismar は犬を連れ帰った日のことを決して忘れない...。   … 110頁

第9章  第9章以下は、今後、本書を読まれる方の楽しみとして明かさないことにしたい。   … 129頁

最終章は第12章。
 

 (2010. 7. 25. 最初の書き込み。)

 

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