*裏表紙のキャッチコピー:
求めよ、さらば与えられん! イストヴァン・ネメレによる第17番目のエスペラント・オリジナルとなる、この短編の犯罪小説でそれをするのは若い女性の刑事コーラ。ワクワクするこのお話で、あなたは彼女と一緒に事故で死んだ画家について調査を進める。殺人か、それとも全く違うのか。ここに、エスペラント犯罪小説のジャンルで女性が初めて謎を解く役で登場する。 求めよ、さらば与えられん!
*この本のタイトルを日本語にどう訳そうかと考えながら読み始めた。「探せば見つかるだろう!」くらいの訳ではありきたりだな、と思いながら。しかし、15頁に画家の元恋人、リンナがコーラに語る以下のようなセリフが出てきて、広辞苑にもある聖書の言葉以外は訳として間違いだ、ということが分かった。しかし、この本が例えば書店に並べられていたとしたら、本のタイトルを見た人は「本を読みながらあなたも犯人探しをしては?」と呼びかけている、と思うだろう。聖書の言葉通りに訳して良いのかどうか、悩ましいタイトルである。
「ベッツ湖には私たち、たった二人きりだったんです。私たちだけが、その洞くつの前で何を話をしていかを知っているのです。彼と私を除いてそのことを知っているのは誰もいません! その上で、この絵につけられている題の「求めよ、さらば与えられん!(Serĉu, kaj vi trovos!)」を考えてみてください。これは聖書からの引用ですが、でも...私はこれが、そのときもそうだったし、今も私に対するメッセージだということが分かるんです。私は彼を探して(求めて)見つけ出さ(与えられ)なければないのだわ!(Mi devas serĉi kaj trovi lin!)大切な、フレッド...」
*ネットでこの聖書の有名な言葉を英国語でなんというのかを調べてみたら、
Ask, and it will be given to you; seek, and you will find; knock, and it will be opened to you. For everyone who asks receives, and he who seeks finds, and to him who knocks it will be opened.
が出てきた(『ヤフー知恵袋』への情報提供者に感謝します)。「マタイによる福音書」7章7節の、
求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん...
の冒頭の句である。エス英辞典(A. McLinen, UEA) では 'serĉi' は英国語で 'search, look for, seek' 、'trovi' は 'find' となっている。したがって第二番目の句の日本語訳「尋ねよ、さらば見出さん(広辞苑には項目なし)」が最も適当と思われる。ザメンホフ訳の聖書で原文に当たりたいと思ったが、本箱に見当たらず!!! 持っているはずなのに。いつか見つかったら追記したい。
*最後に数ページにわたってコーラと逮捕された主犯とのやり取りがある。死んだことで(になって)絵の価値がさらに上がって、画家も自分もお互いにハッピーだったのに、と言う主犯に対して、コーラが「誰でも(拘束されることなく)自由であることが必要だ」と言う。ただの謎解きだけの話と少しは違うぞと思わせる箇所だ。
*面白い言い回し、言葉遣い、単語など
・La posttagmezo similis al ĉiu alia posttagmezo ĝisnuna, ekdenuna. … 「これまでも、これからも」
・perfumeligantino … 「強い香水をあたりに振りまく女性」
・Kelkaj el ili (vagabondoj) lasis sin foti en diversaj pozoj de japanaj turistoj, kompreneble ne senpage. … 日本人旅行者が金を払って浮浪者の写真を撮っている!
・Onidire li ĉiam alvenis per helblua Mitsubishi Galant. … 「三菱ギャラン」
・Do li ĝemis.
"Bone, bone! Dio savu nin de la virinaj langoj, ĉiam mi tiel opiniis."
"Ĉu ankaŭ al via edzino vi jam diris tion?", ridetis Cora. … 「女性の弁舌!」
*ミスプリが少しあるのが残念。
* tralegis due: 2. 11. 2010.
unue: 8. 12. 2004
主な登場人物 -- ほぼ出てくる順に
Cora
… 23歳、独身。刑事(leŭtenanto)。
Emil
… 21歳。刑事(leŭtenanto)。コーラの部下。
Linna Freitas
… 19歳。ブランクの恋人だった。
Fred Brank
… 28歳。新進気鋭の画家。事故で焼死。
Hacker
… 60歳くらい。画商。
Krieger
… ブランクの絵を扱う画商。
Phil
… ホームレス。
Bill
… 風来坊。
Nicolas Barski
… 30歳くらい。風来坊。
Henry Fliss
… 闇世界で "ruĝulo" と呼ばれている。
あらすじに代えて:冒頭から1ページ分ほどを直訳する(…ネメレさんの文体に合わせたつもりだが...)
「電話をとって」とコーラが言った。
その女の子は、 - もう女の子ではなかったし、法律の上ではまだ未婚の女性なのだが - 窓際に立っていた。彼女はおおよそ23歳くらいで痩せ型で美人だった。黒い目をして長めのこげ茶色の髪だった。普段ならゆったりとした短目の服を着るのが好みだったが - ここでは、この「職場」では、コーラは全く違った服装でいなければならなかった。上司はこの場所にふさわしい行儀、服装、表情を常に期待していた。
その場所というのは... 彼女はまるで初めてこの部屋を見るような様子で辺りを見回した。壁掛けといくつかの使い古された家具があるよそよそしい感じを与える部屋だった。
今、彼女は研究所からもたらされたばかりのレントゲン写真を窓のほうへ向けていた。被害者は死の直前に傷害を負ったことがはっきりしていた。骨折が致命傷だった。
「エミール、電話に出てと言ったでしょ! つんぼなの?」エミールは手間取ったがなんとか書類から離れた。彼もまたそのレントゲン写真が届けられた事件で忙しかったのだ。歳はコーラよりわずか2歳若いだけの、背が高く、やや青白い顔をした、あかるい目で手の小さい青年だった。やっと彼は受話器をとった。
「はい、どうぞ...」
彼は丸まる1分間、一言も言わずに聴いていた。コーラはまだ窓際に立っていた。だから、エミールは彼女をじっと見ることになったのだが、十人並み以上に彼女は美しいと思った。彼女の顔に窓辺のカエデが影を落としていた。今、彼女は白い服を着ていたがよく似合っていたし、それは上司が言う「職場の権威」にも少しばかりかなっていた。
「はい、彼が殺されたことはもうはっきりしています」と、エミールがやっと一言言った。上司は、今、何かを早口で話していた。それが終わるとエミールはすぐに受話器を耳から離してコーラの方にさしだした。
「あなたとボスは話したいと言ってます」…
(2010. 2. 17. 最初の書き込み。)