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最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (195)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Serpento en la puto (István Nemere)

『井戸の中の蛇』(イシュトヴァン・ネメレ) 


(20.0 x 14.4 x 1.1 cm: pp 184: セゾーノイ社;カリニングラード; 2009年)
( 2,550円 KLEGにて )

Unuvorte
*無差別に自爆テロを仕掛けるアラブ人のテロリストに対するテロ対策チームの戦い。最近の映画を見ているような、手に汗握る終盤の展開は見事。ネメレさんの最新作。


読書メモ
*本書の舞台は La Urbo と大文字で書かれるのみ。ヨーロッパの何処の都市でも起こりうるからと言う意味で特定の固有名詞を使わなかったのだろうと思われる。地下鉄があり、川べりにモスクがあり、留学生を迎え入れる大学がある都市である。

*自爆テロを行うのはイスラム教を信じるあまり、そしてキリスト教を含む異教徒を殺せば天国でアラーの神に迎え入れられると純粋に信じて、命を捧げる若者だ、と思っていたら、本書に登場するテロリストは少し違っていた。何も知らない若者をだましてリュックをしょわせ、遠隔操作で爆弾を破裂させる卑劣な男である。ネメレさんは本書の中で爆弾テロにはいろいろな形があり、殉教者になることを望み自らスイッチを入れるものばかりではないと指摘する。

*女優、ロリーナは新聞記者たちに向かって彼らの望む意見を言う:「私は、もしも存在するとして、アラーがどんなかは知らない、けれど、モハメッドに何を言ったかは知っている。めくらでなければ誰でもコーランで読むことが出来るわ。いろんな箇所で、イスラム教徒は非信者を殺さねばならないと書かれているわ。非信者とは誰のこと? 私たちのことよ! あなたや私、イスラム教徒ではない全てのヨーロッパ人よ。中世の教会で立派な人たちが愚かにも非キリスト教徒を異端者といったのと同じように、イスラム教徒も他の宗教を信じる人たちを非信者、無宗教者と名づけているのよ。メッカではあの預言者の宗教に従って生活する人だけを人間とみなしているのよ」と叫ばせる。

*ワールベルグは「緑の要塞」にテロの専門家、フォルバーを招き局員を集め話を聞く:ヨーロッパへどっと入ってきた移民たちは多文化に興味もないし、肌の色が混ざり合うことにも関心はない。経済状態が優れていることや権利が多く認められていることにも無関心だ。仕事は見つからず、生活水準も良くならない。敵愾心だけがある。敵とは、我々のことだ。西欧人だ。我々の文化であり、宗教であり、習慣であり生活様式だ。彼らがここで見聞きし、経験したことが少しも彼らを変えることはない。彼らは、ここでは自由で、何にでもなれ、自分の意思で決められるということが全く分からない。彼らはいつもたった一つの意思に従うだけ、たった一人の命令者、あるいは、考えに従うだけで、我々の多文化民主主義をカオスだと考える。そして、西欧は死に値する、自分たちの目から見れば西欧は全くの無政府状態にあると考える。テロを行うものたちは、我々の死を早めてやるだけなのだと考えている...

*そして、続けて:しかし、すでに新しい現象が生じている。アル・カイダ、すなわち「基礎(La Bazo)」の新戦術だ。彼らは、我らの国民、ここで生まれたアラブ出身の市民を探している。彼らは新しいテロリストだ。彼らはヨーロッパにあるモスクでイマームの下にグループを作っている...と(別の箇所で、ロンドンの事件は4人とも英国生まれだった、と。(私(管理人)は初めて知った)。… アフガンやイラクでのいつ終わるとも知れない爆弾テロについて考えさせられた。

*小説の表題になった「井戸の中の蛇」が、東洋の逸話として出てくる。ワールベルグがテレビ画面でインタヴューに応じて市民に語りかけるものだ。曰く、「昔、人間たちと蛇たちの間で戦争になったことがあった。結局、人間が勝って生き残った蛇を全部井戸に放り込んでふたを閉めもうこれで安心と思っていた。しかし、蛇は井戸から地中へ地中から地表へと逃げ出して、時々人を襲うようになった。たいていの蛇は無害だが、中には人間にとって危険なものもある」と。

*下記の目次のようなものを作っていて、各部がどれも正しく10節に分けられていることに気がついた。さすがに、どの部も30頁で、というわけではなかった。どの節も時間が分の単位で記載され、緊迫感を呼び起こすように工夫されている。そして、各部のタイトルの後に、コーランが引用されている。例えば、第6部には、「そして、トランペットが吹き鳴らされる日のことを覚えておけ。そのとき、空でも地上でもあらゆる生き物は恐れおののくであろう...(拙訳)」とある。

*この作品の魅力は対テロ局の局員や局長の性格描写が優れていて、読み進むうちに、皆、愛すべき連中になってくるところにもある。心から局長を信頼し、チームワーク良く働く連中に拍手を送りたくなる。

*ロンドンとスペインで起きた自爆テロも話題として出てくる。ネメレさんの作品は出版されたらすぐ読むべき、と思った。

*最後の頁、184頁に Glosaro と、著者の紹介(Pri la aŭtoro) がある。前者では、ジハード(Ĝihado) 、サラフィート(Salafito) 、セムテクソ(Semtekso):チェコで製造されるプラスティック爆弾の一種、シャヒード(Ŝahido) 、タリーボ(Talibo) 、バハビート(Bahabito) について解説がある。
 後者によると、1944年11月8日生まれのハンガリー人で、1962年以来のエスペランティスト。若い頃に、書店員、測量士、兵士、工場労働者、病院勤務などをした後、ポーランドで図書館員、外国語教師、通訳として6年間過ごす。1972年にハンガリーへ戻った後、保険代理人、図書館員、救急救命士、ハンガリーエスペラント協会の広報局長などに従事。1974年にハンガリー語で初めて、1982年にエスペラントで初めて本を出版。
 1980年以降は作家、ジャーナリスト、翻訳家として活動。エスペラントで20冊以上、ハンガリー語で520冊以上の本を出している。2007年には初めてノーベル文学賞にノミネートされた。現在、彼は家族と(沢山の犬と猫と)共にハンガリーの田舎で広い森に囲まれて暮らしている、とある。…これは彼に関する最新の情報だ!

*第6部では、地下鉄で有毒ガスを遠隔操作で発生させようとするアブ・ムッサと、オマール、イザベラ、「緑の要塞」のスタッフの戦いとなる。オウム真理教の地下鉄サリン事件がネメレさんの頭の中にあったと思うが、ここではアブ・ムッサがアラブ人社会から資金提供を受け、武器商人から危険な武器を買う場面も出てくる。テロを支援し、テロで金をもうけている連中がいるのだ。性悪説に傾きたくなる。

*裸眼立体視(ステレオグラム)が出来る表紙になっている。エスペラントの本では唯一ではないかと思う。都市と公園があり、地下でなにやら不気味なものが潜んでいる感じの絵になっている。

*作品中に出てきたことわざや面白い表現:
・Oni ne por la pesimismo pagas vin.
・malŝparantaj la korpan forton ili sportas ŝvitanataj.
・Tiu ĉi kunsido ne daŭros longe, ĉiu scias... Nenia ceremonio, stariĝo, kliniĝo aŭ similaĵoj. "Ni ne estas en Japanujo", -- delonge diradis la ĉefo(Wahlberg).
・Vizaĝo de Wahlberg restis senmova, kiel la maskoj en la japana teatro, blankegaj, homaj, tamen malhomaj vizaĝoj.
・moviĝantaj ŝtuparoj de la subtera fervojo


* tralegis: 1. 23. 2010.
  



主な登場人物 -- ほぼ出てくる順に 

オマール・ハムディ
   … アフリカからの留学生。アラビア語が話せる。
タリック
   … アフリカの貧しい国に住む少年。テロリストにスカウトされヨーロッパのその「都市」へ船で密入国する。
バドラン
   … アラブ人。じゅうたんの店を経営している。
アブ・ムッサ
   … テロリスト。
ベルタ・ワールベルグ
   … 「緑の要塞」(Antiterorisma organizo de la Urbo: 対テロ局)の指導者。女性。50歳を過ぎている。局員の絶大な信頼を集めている。夫と6歳の息子をテロリストらの報復銃撃で失っており、テロ撲滅に情熱を注ぐ。
リヴェラ少佐
   … 局員。46歳。クラーク・ゲーブルに似ている。背が高くてスポーツマンタイプ。
フライ
   … 局員。40歳そこそこ。もう頭は禿げている。
ラウラ・トルン中尉
   … 局員。大柄でスポーツウーマン。
カイザー
   … 局員。金髪で筋肉質の若者。30歳くらい。
イザベラ
   … オマールと知り合いになる「都市」に住む女性。
マハムド・エル=ナザール
   … オマールの大学の友だち。歯医者の息子。移民二世。
ウィルヘルミ教授
   … 大学で政治学を教える。テロの専門家。
ジロー
   … 教授の元で学んだテロの専門家。企業にテロ対策をアドヴァイスしている。
ローランド
   … 大臣。
ロリーナ・バラッティ
   … 老女優。人が言わないようにしていることを平気で口にすることで有名。
フォルバー
   … テロリストとの人質交換などに従事する交渉人。対テロ局の相談役。
アブドゥラー・ベハジ
   … イスラム教に関する学者。かって前市長の助言者だった。
ハシブ・マダニ
   … アブ・ムッサにテロに使う車として自分のを貸す。スタジアムの保全員。


全6部:部内の節のタイトルとその一部について簡単な内容

第1部 Prepariĝu!(準備せよ!)      … 3頁
 En la urbo: la 5-a de septembro, 12:46
  オマールはその「都市」にある大学へ留学して一年。やっと、タワーに登って「都市」を眺めてみる気になった。彼にとってその「都市」は未だによそよそしい。彼は孤独だ。降りのエレベーターは人で一杯だ。自分の国では、男性と女性がこんなにくっついている状態は想像できない。出口で彼の袖口のボタンが若い女性のハンドバッグに絡まる。「ごめんなさい」「もっと良いハンドバッグを買わなくちゃね。前にもこんなことがあったのよ」オマールは公園の散歩をさらに続ける。前を歩いていた男が急に立ち止まったので、後ろから押されてバランスを崩し、横にいた人の腕につかまる。先ほどの女性(イザベラ)だった。何という偶然!「今日はこれで二回目ね」「後ろから誰かに押されて...」「コーヒーでも飲みません?」
 Ie: la 6-a de septembro, 14:32
  あたりの風景があまりの暑さに溶けてしまっている。タリックはトラックに揺られてどこかへ運ばれている。喉がカラカラだが、水はない。もう春を17回迎えているが、どの春も悲惨なものだった。自分のこれまでの人生で雨が降るのを見たのは何度もない。その雨も長くは降り続かない。イマーム(imano: 礼拝の導師)は彼を待っている人物が「都市」にいると言った。なぜ、自分を知っている人がいるのだろう。自分は砂漠の果てに住んでいて、両親も兄弟も親族もいたが、彼らはつぎつぎに死んでいった。砂漠はどんどん南へと広がっていった。かって、ヤシの木が茂りオアシスが二つもあったところは、今や熱風が砂を巻き上げているだけだ...
 En la moskeo: la 7-a de septembro, 17:10
  −慈悲あまねく、自愛深きアラーの御名において...
今日はモスクにそんなに多くは人が来ていないと、辺りを見回してバドランは思う。
  −神の言葉は真実と現実によって満たされている。誰もその人の言葉を変えることは出来ない。その人は全てをお聞きになり、全て知っておられる...
  バドランは説教の言葉をくり返すが頭に入らない。最近彼が出会った男、アブが気になるのだ。ネットで調べても彼の名はなく、ラジオもテレビも彼の名を言わないのだが、ある種の集まりでは良く知られた名なのだ。実際、彼はバドランに多くのことを教えてくれた。彼と話すとバドランの魂はより自由になるような気がする。旅行から帰ってきたら、今度はどんなことを話してくれるのだろう...
 En la verda fortikaĵo: la 7-a de septembro, 19:46
 Riverborde: la 8-a de septembro, 11:30
 En la vendejo de tapiŝoj: la 9-a de septembro, 18:02
 Sur la maro: la 10-a de septembro, 05:08
 En la universitato: la 12a de septembro, 12:09
 En la televido: la 13-a de septembro, 21:15
 Ĉe la ministro: la 14-a de septembro, 11:36
第2部 La forto de Alaho(アラーの力)      … 37頁
 En la loĝejo: la 21-a de septembro, 20:55
 La Ĵuro de Badran: la 23-a de septembro, 08:31
 Lorina B.: la 23-a de septembro, 14:22
 En la verda fortikaĵo: la 23-a de septembro, 19:58
 En la universitato: la 24a de septembro, 12:56
 En la urbo: la 24-a de septembro, 14:16
 Sur la vendplaco: la 24-a de septembro, 14:31
 TV Nova: la 24-a de septembro, 14:44
 En la urbo: la 24-a de septembro, 18:16
 Nokte: la 25a de septembro, 00:17
第3部 Serpentoj en la puto(井戸の中の蛇)      …65頁
 En la televido: la 25-a de septembro, 01:00
 En la vendejo de tapiŝoj: la 25-a de septembro, 17:28
 En la laboratorio: la 25-a de septembro, 08:13
 En la parko: la 25-a de septembro, 14:38
 Spuroj: la 25a de septembro, 14:47
 En la verda fortikaĵo: la 25-a de septembro, 16:09
 En loĝkvartalo: la 25-a de septembro, 17:46
 En la moskeo: la 27-a de septembro, 13:41
 En loĝkvartalo: la 27-a de septembro, 17:27
 En la loĝejo de Omar: la 27-a de septembro, 16:11
第4部 Kontraŭatako(反撃)      … 93頁
 En la vendejo de tapiŝoj: la 27-a de septembro, 23:24
 En la universitato: la 28-a de septembro, 10:30
 En la ministerio: la 28-a de septembro, 11:03
 En la verda fortikaĵo: la 28-a de septembro, 12:16
 Mahmud: la 28-a de septembro, 16:48
 TV Nova: la 28-a de septembro, 19:35
 En loĝejo: la 29-a de septembro, 07:39
 En la vendejo de tapiŝoj: la 30-a de septembro, 11:50
 Alarmo: la 30-a de septembro, 12:29
 Sekreta vizitanto: la 30-a de septembro, 18:04
第5部 Sankta milito(聖戦)      … 123頁
 En la moskeo: la 1-a de oktobro, 17:21
 Mahmud: la 1-a de oktobro, 20:58
 Omar: la 2-a de oktobro, 07:12
 Telefonoj: la 2-a de oktobro, 10:37
 Renkontiĝo: la 2-a de oktobro, 13:34
 En la verda fortikaĵo: la 2-a de oktobro, 16:45
 TV Nova: la 2-a de oktobro, 19:30
 En montara fervojo: la 3-a de oktobro, 11:35
 En la verda fortikaĵo: la 4-a de oktobro, 15:30
 En la stadiono: la 4-a de oktobro, 16:41
第6部 La lasta juĝo(最後の審判)      … 153頁
 Omar: la 4-a de oktobro, 20:11
 En la verda fortikaĵo: la 4-a de oktobro, 21:16
 En la moskeo: la 5-a de oktobro, 09:00
 En kaŝejo: la 5-a de oktobro, 13:12
 La policistoj: la 5-a de oktobro, 15:03
 En la verda fortikaĵo: la 5-a de oktobro, 15:44
 En la amaskomunikiloj: la 5-a de oktobro, 17:09
 En la verda fortikaĵo: la 5-a de oktobro, 17:16
 Kontraŭteroristoj: la 5-a de oktobro, 17:21
 En la urbo: la 5-a de oktobro, 21:34



 (2010. 1. 30. 最初の書き込み; 2010. 2. 1. 追加の書き込み。)

 

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