ライン

最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (194)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

La fermita urbo (István Nemere)

『閉ざされた都市』(イシュトヴァン・ネメレ) 


(23.0 x 15.0 x 1.1 cm: pp 158: オーストリア国立図書館付属エスペラント国際博物館(IEM);ウィーン; 2000年)
( 1,600円 KLEGにて )

Unuvorte
*26世紀、世界は統一され平和で、戦争やテロなどは起こりえない。2509年生まれの若き心理学者、マーク・ベラーはトールルンドにある心理学研究所に赴任する。ふとしたきっかけで彼は研究所の地下深くに「閉ざされた都市」があるのを知ってしまう...


読書メモ
*前書きも後書きもない。初版は1982年で、ネメレさんのことはもうよく知られているということだろう。よく読まれて初版が売り切れてしまったので、しっかりした製本と印刷で再版されたということか。

*平和な世界は退屈でつまらないのか。そういう世界に住み慣れたものが凶悪な邪悪な性格の持ち主と対峙したときどうなるのか。いつの世にも悪をなすことに平気で、あるいは、自分は人より優れていると考える者がいて、力があるものは、あるいは、優れたものはより多い特権を享受できると考えて良いのか。ナチスのように悪い素因を持った人間を抹殺してよいのか。あるいは、ロボトミーなどを施し「閉ざされた都市」へ送っても良いのか、といった面白い問題が提起されつつ、話が展開する。

*ネメレさんのエスペラントはとても読みやすい。ピロンさんのように優しい単語で書かなくてはといった無理が見られないところが良い。話が面白いし、展開がある程度予想できることが多いので、字引の世話になる機会も少なくて一つ二つの単語の意味など分からないまま読み進められるのが良い。

*ネメレさんの文体は以下の裏表紙のキャッチ・コピーにあるとおりで、とてもすっきりしている(マークとレナとの会話):
- Ili malaperis, senspure. Kaj ĉiam nokte. Onidire iuj
alvenis por ilin forkonduki.
- Kiuj?
- Anĝeloj. Anĝeloj en brilaj vestoj, altstaturaj,
malmultoparolaj. Oni diris, ke ili similis al ni, tamen ili
estis iom aliaj. Noktahore ili alvenis al domo, laŭte
kriis la nomon de iu homo - ĉiam precize ili konis la
nomon - kaj forkondukis lin aŭ ŝin. Neniam tiuj
revenis. Samtiel ankaŭ mia patrino...

「その人たちはあとかたもなく消えてしまうの。そして、いつも夜なの。噂では
何人かの人たちがその人たちを連れにやってくると言うわ」
「何人かの人たち、って?」
「天使たちよ。キラキラ輝く服を着た天使たちよ。背が高くて
ほとんど口も聞かない。皆が言うにはその人たちは私たちに似ているって。でも、その人たちは
少しちがっているの。夜の時間に家にやってきて、大声で
ある人の名前を呼ぶんだわ。− いつも正しく知っているのよ
その名前を。− そして、男の人や女の人を連れて行くのよ。その人たちは誰も
決して帰ってこないの。同じ目にあったんだわ私の母も...

*マークが活躍する地上の世界、「閉ざされた都市」、地上と地下の間の無線による交信、と三つの状況がバラバラに描写されながら話が進んでゆく。それらが一つにつながりだしてからは面白さがましてどんどん読み進むことが出来る。ネメレさんの世界である。

*SF(小説でも、映画でも) に私が引かれる点は、そのストーリーが面白いか、否かばかりでなく、未来の世界を作者がどんな小道具、大道具を持ち出して紹介するかにもある。この作品では、500年後には無人の空飛ぶタクシー(aertaksio) があり、ショックで24時間失神してしまう光線銃(radipistolo) が出てくる。初版が1982年で携帯電話の普及がまだ見られていなかったのか、その手の機器は登場せず。



* tralegis: 1. 17. 2010.
  



主な登場人物 -- ほぼ出てくる順に 

マーク・ベラー
   … 主人公。24歳の新進気鋭の心理学者。
ギャロ・プラット
   … 心理学研究所所長。
エルニ
   … 60歳。黒人。研究所の管理人。マークの父と共にナイロビで学んだことがある。
ボルラッティ博士
   … マークの同僚となる。無口。
メンテレス
   … もう一人のマークの同僚。饒舌。
「王子(プリンツォ)」
   … 「閉ざされた都市」の支配者。
「司祭(パストロ)」
   … 「閉ざされた都市」の宗教的指導者。
ラムッロ
   … 「閉ざされた都市」への新入りの男。
ヴァレンティン
   … 「閉ざされた都市」の反逆者。王子に捕らえられ処刑される。
マラ
   … 王子の愛妾。
ブラント
   … 王子の支配する兵隊達の長。
テルリック
   … 農民達を監督する長。
フリーデ
   … 牧師の一人で司祭の取り巻き。
サトゥナー
   … 同じく牧師の一人。
リボルグ
   … 同じく牧師。
フリーダ
   … 同じく牧師。
「騎士(カヴァリーロ)」
   … 「閉ざされた都市」の第三勢力。「王子」に対抗する。
アルボフ
   … パルチザンの首領。ヴァレンティンに従っていた。
ロンゲ
   … パルチザン。
バンケール
   … 同じくパルチザン。
ムンゴ
   … 同じくパルチザン。
アルファ、ベータ、ガンマ、シグマ
   … いずれも「閉ざされた都市」と地上との連絡員。それぞれが誰々であるのかは読み進むに連れて明らかになる。
レナ
   … 「閉ざされた都市」でマークの手助けをしてくれる若い女性。
ミハイロフ
   … 機密局の少佐。
カンテリ
   … 機密局の長官。
ビクレフ教授
   … 世界政府の一員。
松本
   … 同じく世界政府の一員。
ティラナイケ
   … 同じく世界政府の一員。女性。
ユリウス・バクスター
   … これからの読者のために素性を明かさない。
カール・シーベルグ
   … 上と同じ。
ミグエル・リギエラ
   … 上と同じ。
カタリーナ・ヴィーダ
   … 特別機動隊のリーダー。


全3部:冒頭うから30頁ぐらいまでのあらすじ

第1部 …5頁
 抜群の成績で大学を卒業したマークは自動パイロットの運転で赴任地のトールルンドの心理学研究所へと飛ぶ。彼の卒業論文は「閉ざされたグループに見られる閉所恐怖症の社会学的研究」だった。所長のプラットが彼を迎える。同僚としてボルラッティー博士とメンテレス、管理人のエルニにも紹介される。

 一人の男(ラムッロ)が野原で目覚める。彼を見て子供たちは逃げさる。ボロをまとった女が羊の皮をはいでいる。男が二人手斧で木材を切り出している。「よそ者だ、よそ者だ」と子供たちが男を取り巻いてはやしている。「こちらへ来な、よそ者さんよ。のどか乾いているんだろう」

 研究所の周辺にある森をジョギングしていたマークは直径が30センチほどもあるケーブルが敷かれているのを目にする。これほど大量の電気が研究所に要るのだろうか。別の日、今度は人気のない丘の上で潅木に隠された、ブーンと音を立てている大きな排気口を見つける。

 若いひげを生やした男がそのよそ者を広場へ連れてくる。女たちがマットを広げ羊の乳や陶器のポット、凝乳、鎌、木のさじなどを並べている。「あちらに見えるのが王子の住む宮殿で、こちらの塔が聖チルクロの寺院だよ」と若者が教えてくれる。「王子に仕えたいのかい、それとも司祭?」「どちらにも仕えたくないよ」よそ者は頭の中の何かが壊れてしまっているような気がしている。「俺は何処から来たのか教えてくれ」「誰も知らないよ。いつも火球(Fajroglobo) が輝いていない夜によそ者はやってくるんだ」

 エルニにケーブルのこと、排気口のことを話すと、秘密だがと言って、莫大な額が記載された消費電力の請求書を見せられ、その上、週に一度夜間に運び込まれる、巨大なトラックに積まれた食料のことも話してくれる。彼も不審に思っていたのだ。その支払いは世界政府(Mondregistaro) がしていると言う。マークは排気口から地下へ侵入する計画を立てる。

 馬に乗った兵達が一人の男を縄で引きずって広場を王宮へと進んで行く。反逆者のヴァレンティンだ。それを見ていた男がスイッチをいれ画面で男を確認する。マイクに向かって「アルファからガンマへ」と呼びかける。「こちら、ガンマ」「カメラを広場に向け、この男が誰か調べてくれ」「分かった」

第2章 …111頁
 
第3章 …132頁
 


 (2010. 1. 23. 最初の書き込み。)

 

1冊前に戻る   「エスペラント図書」のリスト、へ
メール アイコン
メール
トップ アイコン
トップ

ライン