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最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (192)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Surklifa (Serĝo Elgo)

『スルクリーファ邸』(S.エルゴ) 


(22.9 x 14.1 x 1.3 cm: pp 214: オーストリア国立図書館付属エスペラント国際博物館(IEM);ウィーン; 2000年)
( 1,750円 KLEGにて )

Unuvorte
*一見、ありふれた交通事故と思えるが、クレーマー警部は殺人事件ではないかと考え聞き込み捜査を開始する。期待たがわぬ面白さ。


読書メモ
「彼女の最後の絵葉書」が面白かったので、KLEG の図書カタログで Elgo さんの本を探し注文した。届いてすぐ読み始めたが、途中で話がつながらなくなって、おかしいと思いよくよく見たら頁が抜けている! 再度取り寄せてもらった(無料!)。IEM の本でもこんなことが起こりうるとは。

*エルゴさんの博識振りがベルクーラを介しクレーマー警部を聞き役として、その無神論とか、政治に対する諦観とかが、披瀝される。とても参考になる。男女間の、一種、自然礼賛といった考え方も、イワンとアンナの関係を通じて展開される。後者は2年後に出版された「彼女の最後の絵葉書」でも、心地よさを伴って主人公のイザベラが私たち読者に紹介してくれたものと同じである。

*「最後に投票したのは?」と、クレーマー警部に問われて、ベルクーラは「56年のロシア軍のブダペシュト侵攻まで」と答える。そして、「いつか、人類は学ぶかもしれないが、俺達は「子供人種」だ。そのことを忘れてはいけない。ミツバチは自分達の社会を築くのに何百万年もかかったんだ」と(155p.)。ここで、ウイリアム・オールドさんの "infana raso" が引用マークつきで使われる。このようにして、エスペラント文化が重層化して行くのだとうれしく思った。

*裏表紙に作品のほんの一部(第4章、55頁)が右端揃えで(ここでは左端揃えにした)紹介されている。読みやすい文体であることが良く分かる。拙い訳とともに以下に紹介した。

Anna venas foje al la vilaĝo, por aĉetoj kaj
dimanĉe al la diservo. Ŝi parolas al neniu, krom
pro strikte necesaj aferoj. Ŝi tute ne havas
amikinojn ĉi tie. Ŝajne ŝi tre malofte eliras. Ŝi ne
forvojaĝas. Preskaŭ neniam forferias. Ŝi restas
enfermita en sia ora prizono. Fakte nenion
klaran oni scias pri tio, kio okazas en Surklifa...

(アンナは時々村へやってくる。買い物やら、日曜日の教会に。彼女は誰とも話しをしない。本当に必要な場合を除いては。彼女はここでは一人も友だちがいない。彼女はめったに外出しないように思える。彼女は旅行に出ない。彼女は自分の黄金の牢屋に閉じ込められている。本当のところはスルクリーファ邸で何が起きているのか誰も全く知らないのだ...)

*言い回し、面白い表現など:
 Bela Blua Danubo … 「美しき青きドナウ」
 La sesa simfonio de Ludoviko van Beethoven … 「田園」! ルドヴィーコだって!
 Kramer estis je la fino de sia latino … 「知識の限界」(エスペラント日本語辞典)。ラテン語('latino')に、こういう使い方がある!
 hoko en la ezoko
 kastelo el ludkartoj … 「砂上の楼閣」か。
 Uloj, kiuj per teruro reĝis en sia deĵoro kaj hejme vivis sub la pantoflo de la edzino.
 Kompreneble vi sedos. … sed は接続詞のみと思っていたら...
 Kaj krome, en la lernejo vi tute ne estis la lumturo, ĉu ne? … 「灯台」の意味のほかに、「指導的人物」(エスペラント日本語辞典)
 surda kiel ŝtipo
 inter blinduloj reĝas strabuloj
 la ĝusta homo en la ĝusta loko
 Ivan sentis sin fiŝ-en-akve kun matematiko.
 "Li marŝas je la 10a kaj 10 minutoj." pensis Kramer. … 大またで歩くこと?
 Li tenis taglibron, kiel gimnazianino. … あらっ、という感じ。
 ne perdi la vizaĝon
 Ivan suprenkuris la ŝtparon "po kvar ŝtupoj".
 Sed vi scias, ĉu ne, "ofte estas tru' en botista ŝu'". … 「紺屋の白袴」
 Mi fartas kiel kuko en butero ĉi tie. … 上の fiŝo en akvo と同じ意味と思うが...
そして、
-- Mi estas nur servisto, ĉi tie, Sinjoro, kaj inter martelo kaj amboso oni prefere ne metu la fingron, ĉu ne, aŭ pli simple...
-- Ne ŝovu nazon en fremdan vazon.
-- Jes, fakte, se vi preferas.

*めずらしい単語など:
 anglaj bastonoj … 松葉杖?
 sinkretismo … 諸説混交主義
 rekoj … 鉄棒(スポーツ)!
 lavabo … 洗面台
 kondiĉita reflekso … 条件反射



* tralegis: 12. 26. 2009.
  



主な登場人物 -- ほぼ出てくる順に 

イワン・レテリエール
   … アンナの兄(4歳年上)。金髪の体が大きな青年。貧民街の学校で子供たちの教育支援をしている。
アンセルモ
   … アンナの前夫。4、5年前に、スルクリーファ邸への私道のカーブで自動車事故死している。
アンナ・レテリエール・セリンゲン夫人
   … セリンゲン氏秘書だったが、氏の甥のアンセルモと最初の結婚。彼がスルクリーファ邸へのカーヴで事故死したあとの2年後にセリンゲン氏と結婚。美人。30歳。子供はいない。
ユリ
   … レインハルト家の執事。
クレーマー
   … ロケヴァーロ地区を担当する警部。垂れ下がる前髪を元に戻すクセがある。
レインハルト・セリンゲン氏
   … レインハルト家の当主。50歳。ファウレ商会の娘と結婚し、ファウレ氏の跡継ぎとなり、建築資材の小売業を経営。会社を大きくすることに成功した。
ネオミア・ファウレ
   … ファウレ氏の娘。セリンゲン氏の妻。病弱。
ヴィンセンテ
   … 子供のいないセリンゲン氏に見込まれ後継者となる契約をしたが、直後に同じカーブで事故死する(本書の冒頭、第1章で)。
アガタ・セリゲン
   … セリゲン氏の叔母。スルクリーファ邸の1階で介護されている。ほとんどつんぼの状態。
ヴィルギーナ夫人
   … 執事ユリの妻。アガタの昼間の介護を中心にスルクリーファ邸の家事をこなす。
アリシア
   … アガタの夜間の介護を通いで担当。看護婦。
セチ
   … あだ名(ベルクーラ(美しい足))で知られる。両足がなく、美しい(?)義足をつけている。広場のカフェの常連。建築現場で働いている時にクレーンが倒れてきて両足を切断。
ガストン・カントール
   … この地区の郵便配達夫。広場のカフェの常連の一人。
ボーデロー夫人
   … あばら家に住む老女。カフェの常連の一人、スケールカーポの母。30年以上前に、「お城(後のスルクリーファ邸)」に勤めたことがある。
ファゾル
   … クレーマー警部の助手。
フリーダ
   … 30年ほど前にヘルモントのホテル兼レストランで働いていた女性。
レイナ
   … イワンの同僚。同じ学校で働く。


全12章:各章の簡単なあらすじ

第1章 La ĝiro(カーブ)
 初夏の夜、藤の花の匂いが漂うスルクリーファ邸の庭からイワンが訪問しようかどうかと迷いながら、邸宅の中をうかがっている。当主はもう寝ているらしい。もう一方のウィングでアンナが若い男と会っている。男は去りがたそうだが、アンナの方はそっけない。アンナと握手を交わしたあと、男は猛スピードで坂を車で飛ばして帰っていった。イワンはアンナに会うのを思いとどまる。遠くで爆発音と共に火の手が上がる。先の車が最後のヘアピンカーブを曲がりそこね崖から落ちたらしい。イワンは現場を見届け、警察に電話し、家へ急ぐ...

第2章 Sabato 1 (土曜日 1)
 クレーマー警部は事故現場を見てから近くのカフェで聞き込みをした後、そのカーブが私道となっているスルクリーファ邸へと赴く。当主のレインハルト・セリンゲン氏は企業家で、事故の話を朝になって聞いて心を痛めている。何年か前にも同じ場所で事故があったからだ。いつもどおり睡眠薬を飲み耳栓をしていたので、昨夜の事故のことは、朝、執事が知らせてくれるまで知らなかったと言う。死んだのはヴィンセンテで後継者になる契約を取り交わしたあと、自分は寝室へ、ヴィンセンテは居残って夫人と話をしていただろうと言う。夫人は寝るのが遅かったので、午後にしか会えない。

第3章 Sabato 2 (土曜日 2)
 クレーマー警部はもう一度カフェへ戻り、常連客でびっこのベルクーラからお屋敷にまつわる噂話を仕込む。再びスルクリーファ邸へ赴き、夫人の部屋へ通される。ドアは3重に鍵がかけてある。彼女はブラームスのヴァイオリン協奏曲をを聞いているところだった。ヴィンセントが自殺とは考えられないかと言うと、夫人はよく分からないと言う。そして、自分の人生で二人だけ大事な男性がいたと言う。一人は自分の弟で、もう一人は前の夫のアンセルモだと。アンセルモは同じ状況で、同じ場所で、事故死した。

第4章 Diamanĉo (日曜日)
 日曜日の朝、クレーマー警部が再び広場のカフェへ行くと、すでにベルクーラがいつものテーブルで本を読んでいる。義足をつけている足が右から左に変わっていることに気づく。実は、建設現場の事故で両足を切断したのだ。「運良く保安帽をかぶっていたので...」保険金が入って、と言う話を聞いているとき、アンナが広場へ入ってきて、教会へ入って行く。酒場の客などが話をやめて静まり返るほどの美しさだ。独特の雰囲気を周辺にもたらしながら(裏表紙のキャッチ・コピー!:上述)。再びベルクーラの話で、一介の会計士だったレインハルト氏がファウラ商会の娘と結婚してからどんどん会社を大きくしていった話、両足切断事故後の彼の妻や出戻り娘の変わりようなど。

第5章 Lundo (月曜日)
 午前中、郵便配達夫、ガストンの案内でクレーマー警部はスルクリーファ邸の前の女主人のところで3週間働いたことがあるという老女のあばら家を訪ねる。お城では連日みだらな乱痴気騒ぎだったので逃げ出してきたという。クレーマーの子供の頃の悪たれぶりを知っていて閉口する。午後は、スルクリーファ邸へ赴き、叔母のアガタをヴルギーナの通訳つきで聞き取り。「前の時も今回も、事故の直前に窓の外をゴリラが通った」と分けがわからないことを言う老女。若いピアノの調律師に作業をさせていたアンナへの聞き取りで、アンセルモの求婚に応じ、しかし彼は不能で酒びたりになり、事故死の後は保険などが入らないとレインハルト氏に聞かされ、彼の家に置いてもらう事に決め、2年後に彼の妻が病死した後、彼と再婚したと言う話を聞きだす。

第6章 Rejnhart (レインハルト)
 レインハルト氏の生い立ちから後継者として育てたヴィンセンテを事故で失うまでが、彼の側に立って述べられる。これまでの話のまとめでもある。彼の愛するアンナ、歳が親子程も違うアンナとの「灰色の結婚生活('griza amor-vivo') について書かれた箇所はとても辛らつ。

第7章 Mardo (火曜日)
 その再興に職人達が熱心に仕事をしたという城のあるヘルモントへ行き、ホテル兼レストランの老主人から父の代に働いていた孤児院から来たフリーダという女性と職人達のことを聞き出す。誰とでも寝る女で、子供が出来た後、親と目される男にその子を託し、ホテルの客の一人だった金持ちの醸造家のところへ嫁いで行ったという。クレーマーはアンナの生い立ちに触れえたと考え、再びロケヴァーロに戻りアンナに話を聞きに行く。職人の両親と兄との4人家族の、貧しいながらも楽しかった子供時代を幸せそうな様子で彼女が話す。兄のイワンとはテレパシーで危機を知り合い、知らせあう関係だとの告白も。

第8章 Anna (アンナ)
 イワンと海で泳いでいて、大蛸に海底に引き込まれそうになる夢にうなされて、明け方に目を覚ますアンナ。夜が明けるまで寝られず、イワンとのことを回想する。代数を教えてもらったこと、代わりに作文などを手伝ったこと。仕事で忙しい両親の目を逃れつつ、お互い異性として意識し始めたこと、初めてキッスを交わしたこと、そして、週末に会いに来てくれるイワンのことなど。

第9章 Vendredo (金曜日)
 セリンゲンの叔母の夜の看病を担当するアリシアを聞き取り調査。事故のあった夜のことは特に変わったことはなかったと言う。カフェに戻って、ベルクーラの無神論者ぶりに耳を傾ける。カフェの主人が何か話したそうにしていた。聞くと、あの夜、事故の後広場の公衆電話からイワンが電話しているのを見たと言う。(…この時点で話の先が見えたと私(このHPの管理人)は思った。果たして、そうか?)。

第10章 Sabate matene (土曜日朝)
 クレーマーから呼び出され、警察へと車で急ぐイワン。用が済み次第スルクリーファ邸へ行き、アンナを解放しようと考えている...

第11章 Sabate vespere (土曜日夜)
 ………

第12章 Dimanĉe (日曜日)
 大団円。


 (2009. 12. 26. 最初の書き込み。)

 

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