*暮れの(2007年)ザメンホフ祭で、パラパラと頁を繰ってみて、活字は小さいし、頁数も200頁近いので、途中で投げ出してしまうのではないかと恐れながら買った本。ところが、案に相違して内容が濃く、活字が小さい分、分量が多く得をした感じだ。楽しく読んでいるうちに読み終わってしまった。
*テキストは、イギリス・エスペラント協会の機関紙(隔月刊?)と思われる 'La Brita Esperantisto' に連載されたものを、テーマ別にまとめたもので、1880年から2003年のものまでがある。インターネットやコンピューター、ケータイの話題が出てこないのは、まだ、これからあとで日常的になるテーマという事もあるが、ひょっとするとロードさんのお年のせいかもしれない。ロードさんは序文に、「私がエスペラントを学び始めた頃(1941年)は皆が「私たちの聖なる義務 (nia sankta devo) 」について話し、直立不動で「エスペーロ」を三節歌ったものだ」とお書きになっている。
*英国語がある程度分かる人には、あるいは、エスペラントばかりでなく英国語(特に、日常会話)も勉強しようと思っている人にはとても有益な本。エスペラントの少し難しい単語が、ところどころで生き生きとした日常で使われている英国語に意訳されている。その人たちにとってとても参考になるのではないだろうか。それにしても、イギリス人は議論好きなんだということがよく分かった。テレビでよく見た英国議会での党首会談の状況を思い出した。
*印字が小さいのがこの本の唯一の欠点。巻末に英国語→エスペラント、エスペラント→英国語の「単語リスト」があるが、文字がさらに小さくなる。拡大コピーして利用させてもらうつもりだ。 'hejma vortaro' を補完するものとして、参照したい。
*マージョリー・ブールトン女史が序文を書いている。
「... かっては、私に出来る一番のアドヴァイスは、流暢に話すエスペランティストについて話す練習をすること、というのだったが、普通のエスペランティストにはそんな機会も時間も得られるものではない。私は、ほかの人と同じように、バギー、二人のロセッティー、シュバルツ、フランシス、バーナード、シラジさんらによる沢山のエッセイやフィクションを読んで勉強した。今なら、私が真っ先にするアドヴァイスは、ドン・ロードさんが書いたものをじっくりと読みなさいということだ。...」。全くその通りと、私も思う。
*教えられたことが沢山あるが、それらのほんの一部を以下に列挙する:
・英語では複数形で言うが、エスペラントでは単数だから注意!、として注に上げているもの:
'tenilo', 'pantalono', 'ŝelko(ズボンつり)', 'tondilo'.
・柔道、空手、忍術のエスペラントとその英国語訳(カッコ内で解説)が出てくる。英国にも愛好家が沢山いるのだろう。
'ĵudo', 'karateo', 'ninĵico (ninjitsu)'.
・ 'sekretemulo(秘密主義者)' を英語訳で 'dark horse' とロードさんがしているので、びっくりして英語の辞書を引くと競馬用語の「ダークホース」のほかに「隠れた人物、意外な才能の持ち主」の訳もあることが分かった。この類の事は枚挙に暇がないほど。改めて、民族語の勉強の面白さとともに難しさを教えられた。
・ 'blato(ごきぶり)' に「(シリコン)チップ(集積回路)」という意味がある!
*会話がどんな調子なのかを、例として一部を以下に訳してみた。(p.172-173: 飲み屋での二人の男たちの会話<1991年>)
「で、やはり、中東で戦争が起きるんだろうね?」
「間違いなく。それで誰かが儲けるんだ」
「もう、ある連中が儲けているよ。君は、ガソリンの値段が上がったのに気がつかないのかい?不正のうえにゆすりだ」
「人生すべてはゆすりばかり、というのが私の意見だよ。ソ連の連中を自由にしてやるとすぐ物価が上昇する。東ドイツの連中を解放してやると、また物価上昇だ。ポーランド人の時もそう。でも、すでに自由を得ている国でも、生活費が上がっている。いたるところでインフレが生じていて、この問題を誰が解決するというのだ」
「今の世界で起きているいろんな問題は、誰も解決できないだろう。あらゆる物が急速に崩れ落ち始めている。で、墓に入ってしまえば、自分はそんなに不幸でもないというわけさ」
「『次の世界』には、もう、「ビールをもう一杯」なんてこともないらしい。そんな世界になったら、君はどうする?」
「馬鹿馬鹿しい!別の世界なんてないよ。この世が唯一なんだが、今の時点で、この世はあまり魅力的ではないね。君は自分の人生に満足しているかい?」
「大変満足しているとはいえないが、十分楽しんでいるよ。趣味が結構楽しいよ。中東で戦争が起きようと、私には関係ないよ」...
* tralegis: 1. 14. 2008.
目次と会話のテーマ(カッコ内は発表された年)
*第1章 「経済と労働」
・ストライキと組合(1980年)
・新聞の見出し(1983年)
・解雇と企業(1987年)
・投機と保険(1988年)
*第2章 「環境」
・動物の保護(1995年)
・狩猟(1998年)
・騒音被害(2001年)
・暖冬(2002年)
*第3章 「家族と家庭生活」
・不機嫌とご機嫌とり(1985年)
・軟弱な子と雪(1985年)
・スパイ網--だぼら話(1985年)
・最近の若者世代と宇宙飛行士(1986年)
・新車とネグリジェ(1986年)
・息子や娘たち(1992年)
・12歳の息子(1992年)
・クリスマスの準備(1998年)
*第4課 「食べ物と飲み物」
・簡単な料理とエクゾティックな料理(1982年)
・重大な晩餐(1987年)
・男子、厨房に入る(1991年)
・もてなし(1994年)
・中国料理のお持ち帰り(1994年)
*第5課 「健康」
・医者(1980年)
・長寿願望(1981年)
・いつまでも患者のまま(1981年)
・歯医者で(1983年)
・家の中での事故(1984年)
・年老いた母(1988年)
・代替医療(1989年)
・エイズ(1991年)
・歯医者にて(1994年)
・楽園で毒を盛られる(1995年)
・心臓のペース・メーカー(1996年)
・奇跡のような手術(1998年)
*第6課 「趣味と休暇」
・冒険ごっこが出来る公園(1981年)
・悲惨な気候(1984年)
・殺人、および、その他の舞台技術(1986年)
・農園で休暇を過ごす(1996年)
・写真狂(1997年)
・市(いち)の遊技場(1997年)
・うらやましい夫婦(2000年)
・子供の楽園(2001年)
・イギリスの都市にローマ人がやってくる(2002年)
・連続メロドラマ(2002年)
・どこへ行こう?(2002年)
*第7課 「家と庭園」
・新居と騒音(1980年)
・修理とぶち壊しの修理(1983年)
・神聖なる芝刈り機(1993年)
・春の庭(1995年)
・冬の冒険(1998年)
・大火事(1999年)
・ホームセンター(1999年)
・鳥たちと狂信者たち(2000年)
・冬に対する保険(2000年)
・転居(2001年)
・なんでも自分でする(2001年)
*第8課 「法と秩序」
・地方裁判所の前で(1982年)
・強盗を仕掛ける(1982年)
・草原の殺人犯(1986年)
・ハイジャック(1988年)
・生の演劇(1999年)
・強盗に入られる−実話(第一部)(1996年)
・強盗に入られる(第二部;終幕)(1997年)
・暴動(1999年)
*第9課 「科学と技術」
・チップ(集積回路)(1980年)
・映画のトリック(1982年)
・道路工事とスケッチ(1982年)
・デジタル、それとも、振り子時計?(1989年)
・俗物かって?(1994年)
・冒険かと阿呆と(1996年)
・テレビの場面に使われる家(1997年)
・道路工事(1997年)
・テレビスタジオ(1998年)
・未来の驚くべきもの(1999年)
*第10課 「買い物」
・ショッピングモールにて(1980年)
・蚤の市(1981年)
・勝敗予想の賞金(1983年)
・ワイン通の叔父(1992年)
*第11課 「社会」
・偏見がいたるところに(1)(1980年)
・偏見がいたるところに(2)(1981年)
・分かっていた大事故(1987年)
・不法駐車監視員(1988年)
・テレビによる選挙のキャンペーン(1989年)
・飲み屋での二人の男の会話(1991年)
・差別−終わりのない議論(1993年)
・黒帯だが弱虫(1997年)
・年間最優秀賞(2003年)
*ボキャブラリー
(2008. 2. 2. 最初の書き込み。2003. 2.3. 追加の書き込み。)