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最近読んだ「エスペラント図書」のリスト


読書記録 (119)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Tria kolekto da krimnoveloj (Ronald Cecil Gates)

『犯罪小説 第3集』  (セシール・ゲイツ)


(20.6 x 14.2 x 0.6 cm: pp 84: マトラヴィル オーストラリア・エスペラント協会 1996 年刊)

Unuvorte
*たわい無いミニ・ミステリーが7編。オーストラリアの教養人の定年後の暮らしぶりを垣間見ることができる。


読書メモ
*なによりもゲイツさんが冗舌なのが良い。短くてすむ話を長くするためとは思わないが、物語の流れから省いても良い動作や細かい状況描写があり、それらがひと頃はやった「朝から晩まで」、あるいは、「起きてから寝るまで」英会話本の文例を思わせるからである。

*例えば、以下のような。

... 彼はトースターにパンを2枚入れた。
 彼女はちょっと待ってから、眉をひそめてたずねた。「それで?」と彼女は言った。「待つんだ。食べながら、全て話してあげるよ」
 彼は棚からマグカップを取り出し、インスタントコーヒーの粉と砂糖を入れ、沸騰したお湯を注いだ。その間にダイアナはトーストにバターをぬり、マーマレードをつけた。彼等は台所の小さなテーブルに座った。カルロが話し始めた。

... Li metis du pantranĉaĵojn en la elektran toastilon.
 Ŝi atendis momenton, antaŭ ol levi demande la brovojn. "Nu?" ŝi diris. "Paciencon! Mi ĉion klarigos, dum ni manĝos." Li prenis de sur breto du tasegojn, enmetis tujkafan pulvoron kaj sukeron kaj enverŝis la bolintan akvon. Diana dume ŝmiris la toaston per butero kaj aldonis marmeladon. Ili sidiĝis ĉe la malgranda tablo en la kuirejo, kaj Karlo komencis rakonti.


*もちろん、傑作とは言わないまでも、お話はそれぞれ面白くて十分楽しめる。もう少し字が大きくて組版がゆったりしているといいのだが。逆に、これだけの分量のエスペラント文を楽しく読めてこの価格(900円)なら、少し得した感じだ。

*舞台は首都から離れた海辺の小都市。ゲイツさんの作品では、警察の人たちが市民ととても良好な関係を保っており、定年退職した人たちが小規模に農園を営むことが可能な、自然にめぐまれた田舎の都市が舞台となることが多い。そして、時代はケータイとインターネットが身近になるほんのちょっと前である。

*警察官の役職は、警視(inspektoro)、警部(detektivo)、警官(plicano)の順になっている(アンダーライン部は私の勝手な訳語)。オーストラリアの警察制度が日本の制度に(私自身、良く知らない!)どのように当てはまるのだろうか。そして、オーストラリアの陪審員制度では、陪審員は20人!(第6作目の「鍵」より。シドニー・ルメット監督作品、「12人の怒れる男たち」で分かるようにアメリカでは12人。日本で導入されようとしている制度では何人?)

*オーストラリアには英国と同じように会員制のクラブがあることが、第7作、「試合の後で」で分かる。かって大英帝国の植民地だったのだから当然か。ところで、この作品の試合は 'globludo' であることが分かるが、「新選エス和」に訳語が無い。'globo' は「球」で、「球技」には違いないが。「クラブ」で祝勝祝いをしてたりするところから、「クリケット(kriketo)」と思われるが...。

* tralegis: 2005. 6. 18.


7つの短編のタイトルと簡単なあらすじ

*ある夜、偶然にも(Hazarde en la nokto)・・・
表紙のまずい「絵」がこの冒頭の事件をうまく伝えている。ある夜、新聞社に勤める若いカルロが駅からの帰り道、新聞社主の娘が車でさらわれるところを目撃する。車のナンバーのうち最初の3文字、LUMは見えたが、その後の数字の3文字は読めなかった。彼の妻は新聞記者で、二人の話を合わせると、事件の全体が見えてくるという仕掛けになっている。凡作。

*果たされなかった約束(Promesoj ne plenumitaj)・・・
ノラン警視が、3日前に知り合ったばかりの看護婦のノルマとレストランで食事をしていると、事件がすぐ近くで起きたと知らせる電話がかかってくる。彼女を連れて現場へ行くと、道路わきに男が死んでいる。その男の顔を見るなり、ノルマが気絶してしまう...

*紹介状(La referenco)・・・大学でエコロジーを教えていた元教授が、政治家や経済学者が集まる会で講演をすることになり、昔読んだアダム・スミスの「国富論」を本棚から引っ張り出し、講演の準備をしていると、彼のゼミにいたという学生から紹介状を書いてくれと電話がかかる。優秀な学生だったことを思い出し、喜んで書こうと返事するが、その学生はにせ者で...。ゲイツさんが元教授に託し、国富論をエコロジーの考え方で読み解くといったたぐいの薀蓄を傾けるのが面白い。「アダム・スミスのユートピアはまだこれから先のことであって、国富論から200年以上たつが、人の性は少しも変わっていない」として、この作品を終わらせている。

*無人島(Gezelta insulo)・・・
「無人島に一人とり残されるとしたら、どんな音楽を持って行くか」という1時間のラジオ番組、「無人島」、をからめた話。ゲイツさんの好みの音楽、かなり凝った曲の数々を聞かされる羽目に。それもまた楽しいが。例えば、第1曲目はヘンデルの「陽気な鍛冶屋」だが、オーケストラではなく、ジョン・ウイリアムスのギター演奏によるもの。そして、ジャズが2曲入った後、最後の第9番目はモーツアルトの交響曲第40番。イオネル・ペルレア指揮、バンベルグ交響楽団のもの、だと! さすが、ゲイツさん!

 生放送中に資料を取りに外にでた事件を目撃した主人公が、通報しようと電話を探しに行くわけにもいかず、ラジオを使って警察に知らせるというアイデアを思いつく・・・このアイデアをもとに、全体を膨らませた感のある作品!

*大都会の夜(Nokto en la metropolo)・・・なかなか遊びに来てくれない大都会に住む息子たちに会いに出かけた田舎暮らしの夫婦。泊まったモーテルで殺人事件に遭遇する。警部とこの夫婦がありふれた芝居をして、犯人に自白させる。

*鍵(La ŝlosilo)・・・
深夜、ガソリンスタンドが二人組みの強盗に襲われ、金庫から現金袋が盗まれる。検問で、一人で車を運転していた男が逮捕され、後部座席から空の現金袋と金庫の鍵が見つかる。警察がガソリンスタンドへかけつけたときには、金庫は鍵がかかっており、もう一つの鍵は、夜は不在の経営者が持っている...。鍵をめぐるトリック。一人の陪審員が不審な点に気づき、無実の罪を着せられた運転手が救われる。そこそこ読ませる。

*試合の後で(Post la matĉo)・・・
クラブで元警視二人と、現役の警視が飲んでいたビールジョッキの一つに砒素が入れられ、元警視の一人が亡くなる。犯人は3人のうちの誰を狙ったのか? 会員制のクラブに入り込めた犯人は? 祝勝会を報道しようと沢山フラッシュがたかれていたが、その内の一枚の写真が決め手になる。切れ味がなかなかに良い。秀作。

(2005. 6. 25. 最初の書き込み。)

 

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