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読書記録 (10)
Kiun libron mi legis lastatempe? 

Apenaŭ papilioj en Bergen-Belsen  (Trevor Steele)


(22.9 x 15.0 x 1.2 cm: pp 148: 1994 年刊行)

unuvorte
*1960年代後半の西ドイツを舞台にした反戦小説。


読書メモ
*読書記録(9)と同じ Steele さんの、今度はフィクション。語学教師として滞在したドイツでの経験を生かして書かれたと思われる。

*エスペラントでのセンスに満ちた会話のやりとりはとてもすばらしい(小説の中では、ドイツ語のやりとりということになっているが)。ドイツ語がうまく話せないポーランド人や、精神に障害のある人たちの会話を、カタコトのエスペラントで表現する方法もよく工夫されている。

*ヒロインのウルリケが雑誌に発表した小論文が作品の中で引用されるが、Steele さんの考え方を代弁しているものであり、著者の、この多様で複雑な世界の将来に対する、楽観的な、そして若者らしい展望が紹介される(124頁)。勇気づけられる。

*アンネ・フランクもここでなくなったという、Bergen-Belsen 収容所を訪れる場面がある(131〜134頁)。劣悪な収容所での生活や、看守達による狂ったような暴力など、あまりのひどさに、生き残ったとしても重い精神障害を負わねばならなかった人たちのことがよく分かる。こんなこと、二度と繰り返してはいけない。

*たまたま、今日(2002.10.15.)、北朝鮮に拉致された5人の方が戻ってきて、テレビで記者会見があった。その方達の挨拶が、一様に短くて表現に乏しく、異様な感じがした。国家という大きな体制の犯す犯罪はどうやったら防ぎ、処罰し、二度とおこらないようにすることができるのだろう。

*ドイツの若者達が、英国人のマークを先生にして英語を勉強しようと自分達の集会に呼ぶ場面がある。バーナード・ショウやテネシー・ウィリアムスの戯曲を大声で読み合わせるという方法(laŭtlegado de teatraĵoj) で、エスペラントでも試してみたい方法だ。'th' の澄んだ発音と、濁った発音を早口言葉で練習させたりもする。

*主人公のマークは大学時代に卓球で優勝杯を争ったことになっており(きっと Steele さんも卓球ができる!)、兵役拒否で雑用係をしている若者と気晴らしに卓球をする場面がある。小生も定年後に卓球を再開したので、卓球の試合を描写するところは、エスペラントではこう書けばよいのか、などとつまらないところで感心した。

*この小説の、シュエークスピア流の終わらせ方は安易である。ちょっと、がっかり。

* tralegis: 10.14. 2002



あらすじ
*読書記録(9)のメモに「1960年代後半のドイツのことはこの本に書いた」とあるとおり、世界中で学生運動が盛んであった、1968年の秋から翌年の2月頃までのドイツ、ホルストハウゼン村にある聖ニコライ荘園が舞台。ここにある古い建物が、第二次世界大戦で、収容所での暴力により精神的に傷を負って社会復帰が困難となった、ロシア兵、ポーランド兵、ハンガリー兵などのリハビリのための施設になっている。施設は欧州各地にあり、英国の貴族の奥方 (damo) が設立した財団が管理している。

*英国人学生のマーク・ブライアントは26歳。教師として就職して、ドイツ語とドイツ文化をさらに勉強するというありきたりの方法をきらって、元受刑者(社会に適応できず、皆、何らかの犯罪を犯して刑務所暮らしを経験している)を集めたその施設の所長職の面接試験(インタビュー)を受ける。ドイツ語を話し、書くことがきできるがドイツ人ではいけない、という要件を満たしており、その職につくことで、ドイツに住み働きながらドイツ語がさらに勉強できる、と安易に考えて。

*ところが、見学に訪れたその施設はとても粗末で、そこの居住者らも社会復帰などとても望めそうにない連中ばかり。まだ、決めたわけでないからそのうちに断ろうと思っていたマークは、しかし、その職を引き受けてしまう。

*たまたまマークが管理委員の一人、サンダーさんのところに滞在しているときに、前任者の女性が急病で倒れてしまい、後継者がすぐにも必要となったからなのか、サンダーさんの、浮ついたところのない知的な娘さんのウルリケに会ったからなのか... しかも、英語の学習会には、アリスというセクスアピール満点の女性もいる。

*前任者は2年で病気で倒れてしまった。マークは予定している半年、果たして勤めを果たしおおせるのか。

*この本の題名となった句は、この施設の居住者で、文才のある元ポーランド兵の返事の中にあった。マークの「なんといったらいいか、もう少し教育的なもの、例えばコメディーとか(を書いてみたら)」に答えて、「マークさん、私はあてこすりなんか書きたくない。ベルゲン・ベルセンには、ほとんど美しい蝶々も見られない。でも、そこで、私達は一度ならず笑ったことさえあるんです。」と。



 

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